オリンピックへの道BACK NUMBER
海外記者が殺到、ざわつく会場…「見ていて辛かったです」“対照的すぎた”ワリエワの悲劇と坂本花織の銅メダル〈現地レポート〉
text by

松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph byJIJI PRESS
posted2022/02/18 17:55

連日ドーピング問題に揺れた北京五輪の女子フィギュア。17日、FSが行われ渦中のワリエワは4位、坂本花織は3位で日本人女子4人目のメダリストとなった
最初の4回転サルコウは本来の出来ではなく、90度回転が足りないことを示す「q」マークがつく。続くトリプルアクセルでは手をついた。その後も2度の転倒などジャンプにミスが相次ぎ、ステップやスピンでも今シーズン見せてきたような曲との調和を感じさせない。演技を終えると、顔を覆った。
得点は141.93点。フリーでは5位、総合でも4位。その表示を見たあと、ワリエワはキスアンドクライから動くことはできなかった。
16歳未満は要保護者であるという規定を考慮に入れつつ「暫定的」という形で、CAS(スポーツ仲裁裁判所)は出場を認めた。ただそれに対して世間では賛否の声が渦巻いた。とりわけ批判的な意見が多かったのも事実だろう。
ADVERTISEMENT
ただ、練習リンクなどでの騒然とした空気、ワリエワが表彰台に上がっていればマスコットセレモニーもメダルセレモニーも実施しないという決定、それらとこの日の演技を考えると、はたしてCASの裁定は「保護した」ことになったのだろうか。おそらくは2つある検体のうちの1つではあるが、ドーピング違反という結果が出た事実は変わらない。今後のドーピング問題との向き合い方、当事者への対応を見越したうえで、別の裁定を導く余地はなかったのか。そう感じさせた。
同門で2位となったトゥルソワが号泣
優勝したのはアンナ・シェルバコワ、2位はアレクサンドラ・トゥルソワ。その表情は対照的だった。控えめながら喜びを見せるシェルバコワに対し、トゥルソワは悔しさを隠そうとしなかった。エテリ・トゥトベリーゼコーチからは4回転ジャンプを4本にするよう指示されたが拒否し、5本組み入れた。すべてが完璧ではなかったが着氷させ、フリーでは1位。ただショートプログラムの出遅れが響く結果となった。それが納得いかなかったようだ。
記者会見では、試合のあとコーチに反発する態度を見せたことを尋ねられた。
「この3年、主な国際大会で優勝していません。いつも目標に向けて努力し、より多くの4回転を組み込んできました。それなのに勝てなかったので動揺しました」
同じチームの1人として、ワリエワをめぐる出来事をどう受け止めていたのだろうか。
混乱の中でも崩れなかった坂本花織「正直うれしいです!」
さまざまな表情が見られる試合にあって、ひと際明るさを放ったのは、坂本花織だった。詳細はNumber1046号掲載の記事に譲るが、団体戦からチームを牽引する役割を果たし、ショートプログラムで3位につけたことで記者会見に出席。ワリエワについて何度も質問されるなど、集中力を維持すること自体が簡単ではなかったはずだ。