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口癖は「目先の一勝より、馬の一生」 世界が認めたトレーナー藤沢和雄70歳がカジノドライヴの米GI挑戦をあっさり諦めた理由
posted2022/02/19 11:02
text by
平松さとしSatoshi Hiramatsu
photograph by
Satoshi Hiramatsu
2月も半ばを過ぎた。毎年、この時期になると、JRAで取り上げられる話題がある。
1つはフェブラリーS。今週末に迫ったダートのGIは、JRAでは例年、年の最初のGIとなる。
そしてもう1つは惜別。とくに2月末の時点で70歳となる調教師は規定により定年となるため、どれだけ優秀な成績を残す人材であっても競馬場を去らなければいけない。
1500勝の名伯楽・藤沢和雄調教師の引退
今年も例に漏れず多くの調教師があと10日で引退となるわけだが、なんといっても惜しまれるのは1500勝トレーナーである藤沢和雄調教師とのお別れだろう。1調教師あたりの貸与馬房数に制限が設けられた近代競馬において、1500勝というのは途方もない数字。そんな偉業を達成出来たのは、もちろん偶然であろうはずはない。
数々の名馬を育てて来た伯楽だが、フェブラリーSに合わせ、2009年の同レースで2着に好走したカジノドライヴとのエピソードを紹介させていただこう。
デビュー2戦目でアメリカに挑んだカジノドライヴ
カジノドライヴがデビューしたのは2008年2月23日。京都競馬場のダート1800メートルで、武豊騎手を背に単勝1・2倍の圧倒的1番人気に支持された。結果は2着馬に2秒3もの大差をつけて圧勝。大器の片鱗を披露した。
すると、2戦目でなんとアメリカ遠征が発表されたのだ。
「上の2頭がベルモントSを勝っていましたからね。オーナーの希望もあって、カジノドライヴもそこを狙おうという事になり、遠征しました」
カジノドライヴの半兄姉のジャジルとラグズトゥリッチィズはいずれもアメリカ3冠レースの最後の関門となるベルモントS(GI)の勝ち馬。山本英俊オーナーはカジノドライヴを購入した時点で「この血統の馬を日本で埋もれさせてはアメリカの競馬関係者やファンに失礼」と、3きょうだい制覇を視野に入れていた。そんなオーナーの願いをかなえるため、藤沢調教師は現地でひと叩きしてベルモントSの出走権を確保しようと考えたのだ。