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ガーナで宣教師をしていたトンガの青年が日本ラグビーで覚醒中! “秘密兵器”オペティ・ヘルが悩む「代表ジャージー」への質問
 

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大友信彦

大友信彦Nobuhiko Otomo

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photograph byNobuhiko Otomo

posted2022/02/18 11:01

ガーナで宣教師をしていたトンガの青年が日本ラグビーで覚醒中! “秘密兵器”オペティ・ヘルが悩む「代表ジャージー」への質問<Number Web> photograph by Nobuhiko Otomo

抜群の存在感を放つクボタスピアーズ船橋・東京ベイのPRオペティ・ヘル。右は日本代表で、同じトンガ生まれのヘルウヴェ。同じ姓だが親戚ではないという

 気になるのは今後だ。他国でフル代表を経験していないオペティは、来日から5年経過すれば、日本代表でプレーする資格が得られる。

「日本は自分がチャンスをもらった国で、今自分がプレーしている国で、僕は日本を愛しています。もしもチャンスがあるなら、日本代表になりたい。チャレンジしたい」

 とはいえ、資格を満たすのは2年先。2023年W杯には間に合わない。その前に母国トンガから招集の声がかかる可能性もあるだろう。

 トンガ代表ヘッドコーチのトウタイ・ケフはオーストラリア代表でワールドカップ優勝も達成し、オペティが子どもの頃に憧れたスーパースター。さらにトップリーグ時代のスピアーズで選手とヘッドコーチを務めた経歴を持つ。オペティにとっては二重のレジェンドだ。

 実際、2019年にスピアーズのトライアウトを受けたあと、いったんトンガに帰国したときにオペティはケフと会う機会があり「お前には赤いジャージーが似合う」という言葉をかけられた。いずれはトンガ代表を目指してほしいというメッセージだろう。それから2年半、オペティの体はベストフォームを取り戻した。

 ――もし、トンガ代表から招集されたら? その問いに、オペティは「それはタフなクエスチョンですね……」と笑った。

「今は日本でプレーしているのだから、ここでのゴールは日本代表になること。だけど、もしも……うーん、今は考えられない。本当に難しい。ハードクエスチョンです」

 それ以上の答えを望むのは酷だろう。トンガ代表から招集されれば、1年半後に迫ったW杯に赤いジャージーを着て活躍して、傷ついた母国を元気づけられるかもしれない。

 一方、リーグワンの規約では他国の代表経験を持つ選手が同時に出場できるのは3人まで。トンガ代表になれば、チームでは南アフリカ代表のHOマルコム・マークス、オーストラリア代表のSOバーナード・フォーリー、ニュージーランド代表CTBライアン・クロッティらと同じ立場で出場枠を争うことになる。半面、W杯で活躍すれば、欧州のビッグクラブから声がかかる可能性もある。いくつもの要素が絡み合う。容易な選択ではない。

 未来は分からない。23歳の前には巨大な可能性が広がっている。だが、どんな選択をしたとしてもオペティは愛される気がする。スカウトやスポンサーや、もしかしたら求婚者が殺到したとしても、オペティが自分を見失うことはないだろう。自分を貫く信仰心と、家族と周囲の人たちへの感謝を忘れることはなさそうだから。

 これから先、オペティが、どこの国のジャージーを着て、どこで活躍したとしても、この才能を世に送り出したのはスピアーズそしてリーグワン――それは2022年に始まった新リーグの最初の功績として語り継がれるだろう。

 僕らは今、その歴史の瞬間を目撃しているのだ。

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