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ジャイアンツ投手陣から絶大な信頼…“日本人初のメジャー常勤コーチ”誕生のウラ側「タイラ以上のハードワーカーはいない」
posted2022/02/14 06:00
text by
四竈衛Mamoru Shikama
photograph by
Getty Images
昨季、9年ぶりにナ・リーグ西地区を制したジャイアンツで、過去14年間、ブルペン捕手を務めてきた植松泰良(たいら)氏が、今季からアシスタントコーチに就任した。メジャーでは日本人初となるフルタイムのコーチで、主に打撃担当の補佐役として、技術指導だけでなく、データの集積、対戦相手の研究などの役割を担うことになった。
「野球はたとえいい選手が集まっていたとしても、勝てるわけでもない。そういうところで、コーチに興味を持つようになりました」
千葉県出身の植松氏は、西武台千葉高時代、甲子園出場経験はなく、卒業後、南イリノイ大へ留学。運動学を専攻する一方、野球部の練習に参加し、サポート役などを続けた。
当初は、トレーナーまたはトレーニング関係の仕事に進む方向だったが、同大の監督の紹介もあり、2006年、ジャイアンツのマイナー・リーグにインターンのブルペン捕手として入団。'08年には、メジャーで本採用され、その後、裏方として3度の世界一に貢献した。
「タイラの勤務倫理に次ぐものはない」
その間、移動日や休日でも練習サポートを厭わず、ティム・リンスカムやマディソン・バムガーナーらエース級の投手から絶大な信頼を集め、チームに不可欠な存在となった。就任3年目を迎えるゲーブ・キャプラー監督は、植松氏の起用理由としてその勤勉さを挙げる。
「彼の勤務倫理に次ぐものはない。タイラは他のスタッフのサポートをする上で粘り強い」
通算2003勝を挙げ、'19年で勇退した名将ブルース・ボウチー前監督も「これまでのスタッフの中で、彼以上のハードワーカーはいない。彼は最も疲れ知らずの働き者だ」と、その献身的な言動に信頼を寄せた。
今季からはサポート役だけでなく、直接、勝敗にも関わることになる。近年のジャイアンツは、フロント主導のデータ重視野球と、ボウチー前監督が浸透させた堅実な野球を融合させ、チーム力を蓄えてきた。
「データだけに偏るのではなく、オールドスクールのスタイルとミックスしてバランスを取ることが大事だと思います。やりがいがあって、楽しい。すごく責任も感じています」
長い裏方生活からたどり着いた植松氏の、新たなアメリカン・ドリームがスタートする。