「常識を覆したい」マスクウーマン初の団体トップへ

　それだけでなく、地方大会も増やしたいという。まだ行ったことのない場所がたくさんある。地方のファンにも、生でスターダムを見るきっかけを作りたいとキッド。

　活躍すればするほど欲深くなる。欲深くなると、まだまだやることがたくさんあると感じる。それは「まだやってないこと」がたくさんあるということだ。1月29日、今年最初のビッグマッチとなるドルフィンズアリーナ（愛知県体育館）大会では、渡辺桃とタッグを組む。

「2人だけのタッグは、実は初めてだから凄く楽しみ。デビュー3戦目くらいで桃の分身みたいなキャラと組んだことはあるけど。ナツコともベビー（フェイス）時代にちょっと組んだだけだから、復帰したらキッド＆ナツコ＆桃は絶対やりたい。みんな生え抜きでそれなりにキャリアもあるのに初トリオ。新鮮なことが意外にあるんだよね」

　続く2月1日の後楽園ホール大会では、前王者なつぽいとハイスピード王座の防衛戦を行なう。自分だけのキャリアを築くために、ハイスピードは欠かせない勲章だ。

「こだわりのあるベルトだから、ハイスピードを自分の色に染めたい。でもそれだけじゃない。ハイスピードは小さくて動きが速い選手のベルトっていうイメージがあるけど、ハイスピードのチャンピオンでありながら赤いベルト（団体最高峰のワールド・オブ・スターダム王座）、白いベルトを狙える選手にもなりたい。マスクウーマンが団体のトップって過去に例がないはず。スターライト・キッドが常識を覆したいね」

覆面レスラーにしかできない話題の作り方

　たとえば三沢光晴は、2代目タイガーマスクの覆面を脱ぐことで“トップ獲り”への野望を示し、実際にエースとなった。だがキッドは、実力があるなら覆面を被ったままでも団体の“顔”になっていいじゃないかと考えている。

　顔が隠れるマスク姿でも感情を伝えやすくするため、動きや表情を大きくすることを心がけてきたが、今はそれも意識しなくなった。自然に“伝わる”ようになっているのだ。マスクを脱ぎ、顔の半分だけ隠した写真をSNSにアップすることもある。それは覆面レスラーにしかできない話題の作り方だ。

「マスクウーマンであることを最大限に活かしたくて。マスクで試合しても“素”の自分が出るしね。でもマスクしないで試合するのは考えられないかな。マスクを被ると自信が出るし、マスクしてるから素が出せる。不思議かもしれないけど、そういうものなんだよね」

　マスクウーマンとして初の女子プロレス大賞も狙いたいという。欲は尽きないしそれを隠さない。誰にも遠慮しないのが“大人のレスラー”の証だ。

（撮影＝杉山拓也）

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