ギラギラした“移籍組”に対して、生え抜きの選手たちはおとなしいイメージがある。スターダムという環境に慣れているからではないかとキッド。

「生え抜きも変わらないといけない。大江戸隊の個々のメンバーもだけど、もっと欲深くていいんだよね。生え抜きだから分かる感覚っていうのもあると思う。自分たちは最初からスターダムに憧れて、スターダムの門を叩いた。ベルトに対する気持ちだって他の選手とは違うと思う。今のスターダムはどんどん大きくなってブランド力も上がってるけど、ずっとそうだったわけじゃない。生え抜きが頑張ってきたから今があるんだから」

「岩谷麻優がいなかったら…」

　かつてのスターダムは、選手の“出入り”が極端に多い団体だった。「たぶん業界で一番多かった」とキッドも言う。やめる選手もいるし戻ってくる選手もいる。

「岩谷麻優、紫雷イオ、宝城カイリの“3人娘”がほとんどのベルトを巻いて、いつもメインに出て、あとは若手」

　それが新人時代の実感だった。大黒柱のカイリとイオもWWEに移籍することになった。

「人が少ないからリングの設営も大変だし、普通の試合とバトルロイヤルで1人2試合やったり。正直、どこかで団体が潰れてた可能性だってあるんじゃないかな。それを守ってきたのが生え抜き選手。特に岩谷麻優がいなかったら、どうなってたか分からない」

　団体が大きくなっている今だからこそ、そのプライドを大事にしたい。ベビーフェイスであろうがヒールであろうが、団体への気持ちは変わらない。ヒールが楽しいのは団体に刺激を与え、盛り上げている実感を得ているからでもある。

岩谷との“1日だけ”の再結成

　1月5日の新日本プロレス・東京ドーム大会のスターダム提供試合では、抽選によって岩谷麻優とのタッグ「MK☆Sisters」を1日だけ再結成することになった。今や敵対ユニット同士、しかし久々に組んでみるとしっくりくるものがあったし、2人が並ぶ姿をファンも歓迎した。

「普段は離れてても、組んだらすぐMK☆Sistersに戻れるんだなって。花道とかコーナーに上がった時にドームの広さを感じて、そこで（コーナーからの合体技）龍星を決めることができたのは本当に嬉しかった」

©Norihiro Hashimoto

　試合には敗れたが、初めて立つドームのリングは格別だった。そこで出てきた新たな“欲”もある。

「今度は大江戸隊のメンバーとドームに出たいな。ドームで試合をしてみて“大江戸隊のみんなにもここからの景色を見てほしい”って。それにやっぱり、スターダムのドーム大会も絶対にやらないと。そこで他団体の提供試合をやったりね。いろんな団体の選手がドームを経験したら、この世界はもっと面白くなるよ。ハイスピードの防衛戦を他団体の選手とやりたい気持ちもあるね。ハイスピードの試合に向いてる選手、たくさんいるでしょ」

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