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「アンチの存在も面白さ」大人になったスターライト・キッドが語るヒールの充実感と“マスクウーマンの野望”《新成人特別グラビア》 

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橋本宗洋

橋本宗洋Norihiro Hashimoto

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photograph byTakuya Sugiyama

posted2022/01/28 17:04

「アンチの存在も面白さ」大人になったスターライト・キッドが語るヒールの充実感と“マスクウーマンの野望”《新成人特別グラビア》<Number Web> photograph by Takuya Sugiyama

今年の新成人であるスターライト・キッド。2021年、大江戸隊加入でヒールとして飛躍した

 大江戸隊の闘いは反則、乱闘なんでもあり。ヒールの自由さが気に入っている。「自分の可能性を広げたい」という狙いは見事に当たった。今では、試合でもマイクアピールでも大江戸隊の中心だ。どうしても獲りたかったハイスピード王座を8度目の挑戦で獲得。6人タッグ、8人タッグといったチーム戦でも、小気味いい動きで試合展開を引っ張る。勝って真っ先に相手チームをこき下ろすのもキッドだ。まさに八面六臂。

「勝手にそうなってた感じかな。自分としては“やってやる”という気持ちしかなくて、それが出ただけ。岩谷麻優の手を振り払ったからには、その意味を示さなきゃいけない。大江戸隊で一番目立ってやるって。だから試合でもマイクでも先に動いてるんだと思う。しかもリーダーの(刀羅)ナツコがケガで欠場してるから余計にね。代わりじゃないけど。ナツコがいたとしても自分が一番でありたいし」

「悪だくみ」するのが楽しくて仕方ない

 昨年12月には、Queen's Quest(QQ)のリーダーである渡辺桃が突然の裏切りから大江戸隊に“電撃加入”。彼女を挑発し、勧誘したのもキッドだった。

「こっちが挑発して、怒った時の渡辺桃はいつもと違ってた。それまではQQのリーダーとして“見守る”立場に落ち着いてたけど、白いベルト(ワンダー・オブ・スターダム王座)の最多防衛記録を持ってるほどの選手がそれでいいのかって。これは大江戸隊に来たら爆発するんじゃないかって思ったら、案の定(笑)。今の渡辺桃、殻を破ってイキイキしてるでしょ」

 ヒールとしてやりたい放題やる充実感は、キッド自身も味わってきたことだ。前よりプロレスが面白くなった。「悪だくみ」するのが楽しくて仕方ないという。

「マイクでも、今の立場なら言っちゃいけないことは何もない。思ったことを全方位にズバズバ突き刺すし、それで相手が燃えればなおいいし」

 スターダムの年間表彰で、大江戸隊はベストユニットを受賞。キッドはファン投票で選ばれる「SHINING賞」にも輝いた。

「ユニットで賞をもらえたのが嬉しいし、ファン投票なんてもう、それがすべてでしょ」

 とはいえ、大江戸隊で何もかもが一変したというわけでもない。キッド曰く「今までやってきたことが間違いじゃなかったと証明できたのが大江戸隊」だ。

「ずっと見てるファンからは“一つ一つの積み重ねがあるから”って。ヒールになっても、やっぱりファンは大事。そこは変えなくていいと思う。あとマスクウーマンとしては、子供からの人気もほしいな。悪だけど(笑)」

ギラギラした“移籍組”と、生え抜きの意地

 これまで培ってきた実力があって、それが開花した場所が大江戸隊だった。「自分がトップに」という思いはSTARS時代から抱いてきたものだ。

 このところ、スターダムでは他団体から移ってくる選手が増えている。今年に入ってからも3人。誰もがここで輝きたいと必死で、ギラギラしている。生え抜きのキッドとしては突き上げを感じたし、うかうかしていたら埋もれてしまうという焦りもあった。

「みんな必死。“自分が自分が”だし、スターダムはそういう場所だからね。新しく入ってくる選手はキャリアが浅い人が多いけど、スターダムではキャリアは関係ない。それに今の流れからすると“絶対、もっと選手増えるな”って思ってる。余裕なんて全然ない。そこで生え抜きとして負けたくないし、他の生え抜きにも負けてほしくない」

【次ページ】 「岩谷麻優がいなかったら…」

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