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「男vs女のデスマッチ」は“凄惨”でも清々しい激闘に…葛西純は対戦した山下りなへ「血まみれでガラスまみれで、お前は最高にいい女」 

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橋本宗洋

橋本宗洋Norihiro Hashimoto

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photograph byNorihiro Hashimoto

posted2022/01/22 17:00

「男vs女のデスマッチ」は“凄惨”でも清々しい激闘に…葛西純は対戦した山下りなへ「血まみれでガラスまみれで、お前は最高にいい女」<Number Web> photograph by Norihiro Hashimoto

1月3日の新木場1stRING大会にて対戦した葛西純と山下りな

「葛西純のデスマッチから元気を」

 そんな閉塞感の中だからこそ、自分の役目があると葛西は感じている。デスマッチが時代を突破する武器になるということだろう。

「この生死をかけたデスマッチのリングで、齢47歳の葛西純がチャンピオンに返り咲く。これはデスマッチ、プロレスが葛西純を必要としてるとしか思えねえ。いや、パンデミックに恐れおののく世の中が葛西純を必要としている。葛西純のデスマッチから元気をもらおうとしている」

 正岡戦、ビオレント・ジャックに挑んで競り勝ったタイトルマッチと、試合内容にもまったく衰えはない。コロナ禍の少し前には腰を痛めて欠場していたとは思えないほどだ。あるいは、休むという判断がプラスになったのかもしれない。そこはキャリアのなせる業だろう。

 欠場を経て、コロナ禍という特異な状況の中で、葛西純は復活した。というより新たな全盛期を迎えた。本人も堂々と「進化」という言葉を使っている。今なおデスマッチを前に進めようている。

“男vs.女のデスマッチ”

 ジャック戦を終えたバックステージ、葛西は女子デスマッチファイターの山下りなを呼び出した。

「最近のお前の活躍にはジェラシーしか感じてねえんだ」

 そう言って、次期挑戦者に指名したのだ。場所は1月3日の新木場1stRING大会。以前からFREEDOMSで男子選手とのデスマッチを繰り広げ、タッグベルトを巻いたこともある山下。その活躍ぶりと実力を、葛西は認めていた。女子選手がFREEDOMSのシングル王座に挑戦するのは初めてのことだ。

「お前の人生、いい意味で狂わせてやる」

 そう言われた山下は言った。

「葛西純の人生で一番の女、一番忘れられない女にしてやるよ」

 言葉でも闘おうとするデスマッチファイターだからこそ、おそらく葛西は山下を挑戦者に指名したのだ。

 新木場は後楽園よりは小さな会場だが、熱気に関して言えば葛西vs.ジャックも葛西vs.山下も変わらなかった。チケットはやはり完売。“男vs.女のデスマッチ”を、ファンは支持したのだ。山下なら葛西とのシングル、タイトルマッチでも満足させてくれる。そういう信頼を、彼女はこれまでの闘いで築いてきた。

ガラスを口に詰め込んでパンチ…それでも清々しい

 蛍光灯で殴り合い、ガラスボードに叩きつけ、葛西は砕け散ったガラスを山下の口に詰め込んだ上でパンチをぶち込んだ。そう書くと凄惨だ。写真を見て、これを“残酷”と捉える人もいるだろう。しかし現場で見ている感触としては、むしろ清々しい。

 頭脳と技巧と体力の限りを尽くして攻撃し、それを受け止め、倒れても立ち上がる。カウント2で返す。そんなプロレスの“核”の部分が、デスマッチでは増幅されるのだ。葛西が山下を下した技は、ジャック戦と同じクロスアーム式スティミュレイション。現在の葛西の最上級のフィニッシュだ。それを使った/使わせたことにも、この試合の意味があった。

 ボロボロになるまで闘って、マットに倒れ込んだ山下に、葛西は言った。

「血まみれで、蛍光灯とガラスまみれで、口からヨダレたらしてるけど、お前は最高にいい女だよ」

【次ページ】 葛西から山下へ「最高の女じゃなくて最高の人間だ」

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