濃度・オブ・ザ・リングBACK NUMBER
元アイドルの“現役女子高生”がなぜプロレスを? 細川ゆかり(工業高2年)の“やりたいことやりまくり”人生「卒業後は医療系に」
text by
橋本宗洋Norihiro Hashimoto
photograph byNorihiro Hashimoto
posted2022/01/16 11:01
GLEATに所属する高校2年生の女子プロレスラー・細川ゆかり
「胸を借りるとか、そういう感じじゃないです。チサコ選手の試合は数え切れないほど見ているので、すべて知ってると思います」
試合前にはそう言っていた。チサコの実力を体感した試合後はさすがに茫然としていたが、怖さを感じたかと聞くと、それはなかったという。宮城とのエキシビションでは「宮城選手は凄く優しいんですけど、闘うと優しさの中に怖さがありました」と言っていた。
「根拠? ないです。でも自信だけはあります」
怖さを感じなくなった分だけ成長なのかもしれない。エキシビションに向けた宮城とのツイッターでのやり取りで、何のためにリングに立つのかと聞かれた細川は「GLEATのスーパースターになるためです」と答えている。その時、頭の中ではミュージカル『ジーザス・クライスト・スーパースター』の曲が鳴り響いていた。
「スーパースターになるんだと言ってみたら、スーパースターになった気がしちゃいますね、不思議と。心構えからスーパースター。新人だっていう意識はないです。根拠? ないです。でも自信だけはあります」
根拠があるとすれば、それはGLEATの環境で得た成長の手応えだ。プロレスの練習ではカズ・ハヤシの手ほどきを受け、松井大二郎に関節技を習う。田村潔司のジムでは総合格闘技の練習にも取り組む。いずれはUWFルールの試合もしたいそうだ。HEAT-UP道場の頃から関節技が好きだったが、GLEATに来て拍車がかかった。
「アキレス腱固めが得意なんですよ。ふくらはぎのところに極まるポイントがあるんです。寝技、楽しいですね」
理にかなった動きで相手を支配して痛めつけるのが楽しいそうだ。
「今は成長している実感しかないです」
だからチサコ戦の後もへこたれることがなかったし、普段は気が弱くても、リングに上がったら気が強い人間なんだと実感できた。大会のエンディングで流れたシングル王座決定トーナメントの告知映像を見ながら、自分の名前が出てくるのを本気で待っていたとも言う。
最終的な目標は「社長になりたいです」
もっと実力をつけなければいけないことは分かっているが、何かをやるにあたって「自分には無理」とか「まだ早い」とは絶対に考えない。だってスーパースターだし。
いろんな資格を取って、医療系の大学で勉強して、プロレスではスーパースター。最終的にどうなりたいのかと聞くと「内緒ですけど」と言いながら教えてくれた。
「社長になりたいです、リデットの。それで会社の名前をユカリデットにしたくて」
単なる“変わった子”で終わるのか、それとも何かを成し遂げるのか。それはこれからの話。ただ細川が17年とちょっとの人生の中で、あらゆることを自分で動いて実現させてきたのは確かだ。カズ・ハヤシと田村潔司に同時進行で指導してもらえる高校生は彼女だけだろう。
取材後に本人から「記事にかわいいって書いてください」と(ツイッターを通じて)言われたので、それも付け加えておこう。スーパースターだしかわいいし、好奇心旺盛な17歳にはなんでもできる可能性がある。
記事内で紹介できなかった写真が多数ございます。こちらよりぜひご覧ください。