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藤井聡太vs渡辺明の王将戦第1局は将棋史に残る激闘… 棋士の視点から“驚きの名局”を振り返る〈衝撃の▲8六歩、両者1分将棋〉
posted2022/01/17 11:02
text by
田丸昇Noboru Tamaru
photograph by
JIJI PRESS
王将戦の主催紙であるスポーツニッポン(ほかに毎日新聞社、日本将棋連盟が主催)の元旦の1面には、甲冑をまとって江戸幕府の初代将軍・徳川家康に扮した渡辺王将と、掛川城主だった山内一豊に扮した藤井竜王の姿が大きく載っていた。将棋界の覇権をかけた「天下分け目の勝負」を前にしたパフォーマンスだった。
両者は正月の過ごし方について、次のように語った。
渡辺は初詣や願い事をしないそうで、「もういくつ寝ると王将戦……」という気持ちで迎えるという。
藤井は初詣に行っても無意識に手を合わせるだけで、好きな正月料理は「蒲鉾」だという。
両者は、受け取った年賀状には、必ず手書きで返事を出すそうだ。
渡辺には現役最強という意味から「魔王」という異名がある。しかし、2020年に棋聖戦五番勝負で挑戦者の藤井に1勝3敗で敗れ、棋聖のタイトルを失った。2021年には棋聖戦で藤井にリターンマッチを挑んだが、3連敗して返り討ちにあった。調子は良かったので、思いも寄らない結果だったという。
渡辺王将は100万円以上の高性能パソコンを購入
それでも渡辺は、藤井との次の勝負に備えて前を向いた。藤井も利用している「ディープラーニング(深層学習)」系の将棋ソフトを導入し、それに合わせて100万円以上の高性能パソコンを購入した。
現代棋界では「AI(人工知能)」による研究も勝負のうちである。ただし、対局で実力を発揮するための補完手段であり、強い精神力、臨機応変の判断力、勝負への集中力が必須である。
藤井は棋聖戦で渡辺を連破したが、内容的には際どい将棋が多く、強さを感じているという。王将戦は2日制で持ち時間は各8時間(棋聖戦は1日制で持ち時間は各4時間)。その方式で戦い慣れている渡辺との初めてのタイトル戦だ。封じ手のタイミング、持ち時間の使い方に留意したい、と語っていた。
渡辺と藤井の公式戦の対戦成績は、渡辺が2勝8敗(王将戦第1局の開幕時点)と大きく負け越していた。しかし、直近の対局である昨年9月の銀河戦で渡辺が勝ち、連敗をひとまず5で止めた。