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《五輪連覇へ》“氷から離れた”昨季が脳裏に浮かんで…小平奈緒(35)が目を潤ませた理由「安心して3人に1500mを任せられます」
text by
矢内由美子Yumiko Yanai
photograph byKYODO
posted2022/01/10 11:00
五輪選考会最終日。1500メートルのレースを終え、健闘をたたえ合う小平奈緒(左)と高木美帆(右)
「力んでスピードに乗せるのではなく、1500m特有のタイミングで滑る」という技術。飽くなき探究心をすべての取り組みに注いでいる。
取材対応では目を潤ませる場面もあった。北京五輪への抱負を聞かれた時だ。
「昨年、自分の体を使えない、思うように滑れない、そういう……」
苦しかった道のりを思い出し、言葉を詰まらせた。脳裏に浮かんでいたのは2020-21シーズンの序盤戦。左の股関節に違和感を覚えた小平は、W杯出場を回避して氷から離れ、陸上トレーニングによってフィジカルを一から作り直すという思い切った決断を下した。
「安心して3人に1500mを任せられます」
「自分の人生だから、成功も失敗もすべて正解」という"覚悟"を持ってスケートに取り組んでいるのが小平という選手である。自分で決めたことに責任を負っている以上、決断を信じて突き進むことに迷いはなく、つねに毅然と振る舞ってきたが、心の奥には不安があったのだろう。
「そこからまたスケートができるようになって、みなさんの目の前で滑れることの幸せを感じた。多くの人の支えの下でまたスケートができる。それが本当にうれしくて、私自身の生き甲斐にもなっている。オリンピックという特別な舞台でまた自分を表現できることにありがたみを感じながら、ワンストロークずつ、氷の上に刻めたらいいなと思っています」
残り1枚だった1500mの出場切符を手にした高木菜那への賞賛も忘れなかった。
「菜那選手が本当に気合の入った素晴らしいレースをしてくれた。自分のベストを尽くしたその結果だと思っているので、本当にがんばってという思いです。単純に実力の差で決まったので悔しさはありません」
さらにこのように加えた。
「安心して3人に1500mを任せられます。美帆選手には、オリンピックは3人で表彰台を独占してねと言いました」