第98回箱根駅伝(2022)BACK NUMBER

「これが最後のレース」「公務員として市民ランナーに」競技を辞める4年生たちが〈第98回箱根駅伝〉で見せたラストラン 

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生島淳

生島淳Jun Ikushima

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photograph byYuki Suenaga

posted2022/01/13 11:00

「これが最後のレース」「公務員として市民ランナーに」競技を辞める4年生たちが〈第98回箱根駅伝〉で見せたラストラン<Number Web> photograph by Yuki Suenaga

中大の2区を走った手島駿。1区・吉居大和からトップで渡されたたすきを粘ってつないだ

中野監督「細谷は最高の公務員になれる」

 帝京大の中野孝行監督もまた、日頃から「箱根駅伝は、じっくり練習を積んできた4年生のものです」と話している。細谷自身も、帝京大らしい「たたき上げ」の選手。1年生、2年生の時はメンバーには入れなかったが、地道に練習を重ねた結果、3年生になって実力が花開いた。中野監督は細谷のことをこう話す。

「帝京大のキャッチフレーズ『世界一、諦め悪く』という言葉は、細谷のためにあると思えるほど、4年間、ねちっこく練習を積んだ選手です」

 これだけの実力者でありながら、競技を続けることなく、卒業後は地元の山形県に帰って公務員になる予定だ。「社会人になったら、地元で市民ランナーとして走っていこうと思っています」と語る細谷に対し、中野監督は、はなむけの言葉を贈った。

「5区は大変な区間です。なかなか2回続けて区間賞を獲れる選手はいません。細谷はよく4年間、辛抱しました。最高の公務員になれると思います」

早大・中谷「目指しているものからかけ離れた結果」

 一方、卒業後も競技を続ける予定ながら、今回の箱根駅伝では目標に手が届かなかった選手もいる。

 早稲田大学の2区を担当した中谷雄飛(4年)は、最後の箱根駅伝で思ったような走りができず、チームも総合13位でシード権を逃した。

「苦しい状況でたすきを受けたんですが、正確な順位は把握していなかったです。本来は、4年生である自分がチームに勢いをつける走りをしなければならなかったと思うんですが、それができなくて……チームとしても、個人としても、目指しているものからかけ離れた結果になってしまったので、ショックというか、申し訳ない気持ちでいっぱいです」

 同級生には有望な選手が多く、「4年間のうちに一度は総合優勝を」という思いが強かっただけに、心残りも多いだろう。それでも早大での4年間で、実りはあった。2020年の日本選手権では10000mで27分台もマークした。

 手島や細谷とは違い、中谷は卒業後も第一線で競技を続ける。最後の箱根駅伝での苦い思いが、将来は競技者としての飛躍につながることを願ってやまない。

【次ページ】 青学大・飯田「しっかり勝負していける選手に」

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