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《駒澤大学に進学予定》史上最速の高校生ランナー・佐藤圭汰(洛南)が誓う目標とは?「三浦龍司さんには負けたくない」
posted2021/12/26 06:00
text by
太田涼(スポーツ報知)Ryo Ota
photograph by
Miki Fukano
「五輪や世界陸上で活躍したい。三浦(龍司)さんにできるなら、自分にも絶対できると思うんです。すごいけど、いつか越えたいという存在で、自分もいつかやってやるぞって。負けたくないんです」
坊主頭に筋骨隆々な体つき。17歳にして修行僧を思わせる雰囲気をまとうのは、史上最強高校生ランナーとも言える佐藤圭汰だ。
京都・洛南高、3年生、身長は183cmの大型ランナーだ。話を聞いたのは、自身3つ目の高校記録となる3000mで7分50秒81を樹立する数日前のことだ。木訥とした青年は静かに口を開いた。そこには、何のおごりも誇張も感じられない。
「三浦さんから『お前もオリンピック目指そう』って」
三浦龍司(順大)に負けたくない――。勝ちたい、とは言わないのは、雲の上だとは思っていないからだ。佐藤にとって洛南高の2年先輩にあたる三浦は、今夏の東京五輪男子3000m障害で日本人初の7位入賞。本職のサンショー以外でも、3000mで日本歴代4位、5000m13分26秒78とすでに日本トップクラスの記録を持つ。
洛南高時代に1年間だけ三浦と一緒に過ごした佐藤は当時を振り返る。
「身近な先輩です。3年生と1年生だったので、一緒にいた時間は少ないんですけど、練習以外では普通の高校生で。自分は陸上の動画をけっこう見るんですけど、三浦さんはマンガとか、ゲームとか……(笑)。まだ実力的には遠い存在だったですけど、練習では何とか食らいつこうと目標にしていました」
そこから2年を経た今、3つの高校記録を持つまでになり、先輩と同じ目線で戦おうとしている。
「(今夏の)日本選手権の後、短い時間だったんですけど話をする時間があって、三浦さんから『お前もオリンピック目指そう』って言ってもらえた。自分も出てやるぞって気持ちになりました」
“とんでもない逸材”が現れたと直感した
佐藤の走りを初めて生で見たのは、2月に福岡で開催されたクロスカントリー日本選手権だった。トラックともロードとも違う、不整地でのレース。潜在能力、コース取りやペース配分といったランニング偏差値、そして精神的な強さなど色々な観点で選手を評価することができるのがクロカンだ。
目に止まったのは、留学生と序盤から競り合う佐藤の姿。どこまで持つのか――。1周。2周。コースを回ってきても、まだ一緒に走っている。むしろ、良いリズムをもらうかのように、周回を重ねる毎にフォームが洗練されていく。時折前に出ては、仕掛ける。最終的に僅差で敗れたが、とんでもない逸材が現れたと直感した。しかし、真に見るべきはその直後。頭を抱え、悔しさをあらわにしたのだった。
「勝つチャンスのあるレースでしたし、勝たないといけないパターンだった。もったいないというより、ふがいない」
佐藤の走りは、速さより明らかに強さを求めていた。つぶれることなんて考えずに、攻め抜く。記録がかかっていようが、関係ない。結果としてついてくるのが数字だと、言わんばかりの姿に自然と心が惹かれていた。