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大田泰示「ハマスタは一番興奮する球場ですよ」神奈川に帰ってきたスラッガーが熱く語る新天地DeNAでの決意
posted2021/12/23 11:06
text by
石塚隆Takashi Ishizuka
photograph by
KYODO
“そういうこと”がある世界だとはわかっていた。けれども実際に自分がその立場になってみると動揺を隠すことはできなかった。
11月16日、大田泰示は北海道日本ハムファイターズから保留手続きを行わないことを通達された。そして12月2日に自由契約。世間には“ノーテンダー”という聞き慣れない言葉が行き交った。
「びっくりして、頭の中が真っ白になりました。いくら覚悟や危機感を持っていたとしても、それを告げられるのは初めての経験なので正直、衝撃はありましたね。これが“そういうこと”なんだって……」
東海大相模高校出身。類まれな身体能力と長打を武器に、2008年ドラフトで巨人に1位入団。スター候補として期待されたが、8年間過ごした巨人では殻を打ち破ることができず、2016年オフに日本ハムへトレードで移籍。捲土重来、新天地で地力をようやく発揮すると、大田はついにレギュラーを獲得した。一見、成功したようだが、常に危機感を胸に抱いてのプロ生活だった。
ついに現実になった危機感
「ジャイアンツ時代も4年目以降は、結果が出なければなにが起こるかわからない、クビになるかもしれないという気持ちをずっと持っていて不安だったことを覚えています。それはファイターズに移籍してからも変わりませんでした。とくにファイターズは若い選手を積極的に起用するチームです。ですから結果を出しつづけなければ、“そういうこと”が早い段階で来る可能性もあるのではないかと」
今シーズンの大田は不振にあえいでいた。日本ハムに移籍して5年目、登録・抹消を繰り返し、これまで400以上をキープしてきた打席数は約200へと落ち込んだ。最終的には76試合に出場し39安打、打率.204と言い訳のできない成績に終わってしまった。
「今季は3割、20本を目標に、なにが必要なのか模索しながらやってきたのですが、いろんなことに取り組んでいく中で、言ってみれば自分のバッティングに不信感を持ってしまったんです。感覚のズレもありましたし、対ピッチャーへのアプローチもなかなか上手くいきませんでした。不信感を持ちながらでは悪循環になってしまい、直さなきゃ、修正しなきゃという思いばかりで……」