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「厳しいことが言える選手でいたい」守田英正26歳が語る“今、一番意識する”田中碧とサッカー日本代表の世代交代
text by
林遼平Ryohei Hayashi
photograph byGetty Images
posted2021/12/22 11:05
ポルトガルに渡って1年、チームの主軸としてプレーするMF守田英正。日本代表ではプレッシャーが懸かる試合で大役を担うなど、着実に存在感は増している
ポルトガルでの話を聞いているとき、ある選手の顔が浮かんだ。現在、ドイツ2部のデュッセルドルフでプレーする田中だ。川崎や日本代表でコミュニケーションを多くとってきたからかもしれないが、守田と田中の思考がすごく似ているような気がした。“上手くなるためには他の世界を知る必要がある”。海外に行くことが良い悪いではなく、成長するための手段が同じ方向を向いている。
川崎時代から2人は常にポジション争いをする関係性だった。2020年のシーズン序盤は、田中がアンカーの位置に入る機会が増えたことで、守田がベンチを温めるシーンも多くなった。その頃は互いに会話が少なくなっていたと笑う。
「碧のことは昔からリスペクトしてるんです。ただ、あの時期は正直、自分の調子もそこまで良くなくて、一方で碧は2019シーズンからグッと伸びてきていた。自分の立ち位置がちょっと危ないなと思ったんです。これは自分の良くないところだと思いますけど、負けたくないと思えば思うほど変な馴れ合いをやめたくなってくる。絶対に勝ちたい、負けたくないと思い始めてからはご飯を食べる回数がどんどん少なくなった。いま思えば先輩として小さいなと思います(笑)」
守田がアンカーで定位置を確保し、田中がインサイドハーフにポジションを上げてからは少しずつ会話は増えていった。シーズン中盤以降は田中が自身の悩みを守田に相談していたようだが、「それはお互い様です」と笑う。
「立ち返る意味でもお互いが話題を共有してどう思うかをすごく話していました。僕もよく文句を聞いてもらっていましたよ(笑)」
「いま、一番意識する選手」
そんなふうに切磋琢磨してきた2人が日本代表の中盤を支える存在になろうとしていることは、川崎のサポーターだけでなく、多くのサッカーファンが注目しているところだろう。
前述したオーストラリア戦では初めて2人で同じピッチに立つと、抜群の関係性で中盤を補完。「4-3-3を成功させる上では必要なサポートというか、一緒に組めたことはやりやすかった」と振り返るように、いきなりのシステム変更に加え、出場機会が互いに少なかったことを考えると、よく知る間柄の選手が近くにいたことは落ち着いてプレーできる一因となった。
無論、今後は同じポジションを奪い合う存在になることも有り得る。「ライバルとは思わないですけど、ポジション的にもやるべきこと、求められることが似ているところはあるので、いま一番、意識する選手」とは守田の言葉。彼らがどんな形で共存していくかは楽しみなポイントと言えるはずだ。