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浦和vs大分、ハイレベルな戦術合戦の末… 関根貴大とリカルドレッズが取り戻し、継承した「闘う姿勢」〈天皇杯〉
text by
飯尾篤史Atsushi Iio
photograph byKazuhito Yamada/Kaz Photography
posted2021/12/21 11:04
3大会ぶりの天皇杯制覇を果たした浦和レッズ。リカルド体制1年目にしてタイトルを手にした
「セカンドボールを小泉君と江坂君に拾われることがあった。うちは中盤がダイヤモンドなので、どうしても(アンカーの)小林裕紀の脇のスペースが空く。それに、自分たちのボールの動かし方にもスムーズさがなかった。センターバックのペレイラとエンリケだけでは上手く行かないので、小林にはできるだけ早く落ちて3枚になるように伝えていた。でも、浦和が遮断してきた。そこで後半はダブルボランチにしてスペースを埋め、下田を左下におろして3枚を作るようにしました」
後半、4-4-2に変更した大分は、縦パスが通るようになり、流れをたぐり寄せることに成功する。さらに、浦和の酒井宏樹、岩波拓也、アレクサンダー・ショルツによるビルドアップを封じるため、2トップ+もうひとりでマンツーマン気味にしてプレスを仕掛け、浦和を押し込んでいく。
目まぐるしいほどの両ベンチの駆け引き
リカルド・ロドリゲス監督も手をこまねいていたわけではない。
72分にキャスパー・ユンカーに代えて左サイドバックの宇賀神を投入。ビルドアップの際の最終ラインの人数を4人にしたうえで、酒井が攻撃参加しやすい状況を作る。酒井が右サイドで幅を取ることで右サイドハーフの関根貴大が中央、ときには左サイドまで顔を出し、勢いを取り戻すのだ。
その後も目まぐるしいほど、両ベンチの駆け引きが続く。
大分が79分に長身ストライカーの長沢駿を投入すれば、浦和は83分にDFの槙野を送り込んで5バックに変更し、逃げ切りを図る。
そこから大分が終了間際にゲームを振り出しに戻すと、延長戦突入も予想された90+3分、「お祭り男」を自認する千両役者が劇的ゴールを決めるのだった。
レッズユース出身の関根が口にした危機感
「いや、もう、正直びっくりしましたし、こういう舞台でしっかり結果を残す男だなと、改めて感じました」
試合後に槙野を称えたのは関根である。
レッズユース出身で、アカデミーの先輩である宇賀神からあとを託された男は、阿部、槙野、宇賀神らが去るチームに対して危機感をあらわにした。
「たくさんの選手が出ていくので、想像しているよりも来年はさらに厳しくなると感じている。そんなに簡単にいられるクラブではないので、僕たちもどうなるか分からない。浦和に居続けられるなら、頑張りたいと思います」
関根がチームに対する不安を打ち明けるのは、これが初めてではない。