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浦和vs大分、ハイレベルな戦術合戦の末… 関根貴大とリカルドレッズが取り戻し、継承した「闘う姿勢」〈天皇杯〉
text by
飯尾篤史Atsushi Iio
photograph byKazuhito Yamada/Kaz Photography
posted2021/12/21 11:04
3大会ぶりの天皇杯制覇を果たした浦和レッズ。リカルド体制1年目にしてタイトルを手にした
阿部の引退、槙野と宇賀神の退団が発表された直後の横浜F・マリノス戦後の囲み取材でも、こんな風に吐露していた。
「浦和のために闘ってくれた選手が去るのは寂しいし、不安な部分も大きい。僕自身しっかり引き継いでいかないといけないという覚悟もありますが、今のクラブにその気持ちを持っている選手がどれだけいるのかなという不安もすごくある」
関根は決してチームメイトを批判したかったわけではない。しかし、近年は毎年のように監督が代わる浦和において、メンバーも大きく変わっている。
今季誕生したリカルド体制でさらに大きく変化しようとしている今、コロナ禍によってファン・サポーターとの交流の機会も減り、満員の埼スタで大歓声を浴びることもない。
浦和を背負うことの重みを、闘う姿勢を
果たして、浦和を背負うことの重みを、どれだけの選手が感じているのか――。
関根が危惧するのも無理はないし、関根と同じような不安を抱えるファン・サポーターも少なくないのではないか。
もしかすると、天皇杯準決勝の宇賀神の先制ゴール、決勝での槙野の劇的なゴールを見て、不安をさらに強めた人もいるかもしれない。
本当に、彼らがいなくなって大丈夫なのか、と。
しかし、間違いなくこの日の国立競技場では、浦和が大切にしてきたものを見て取ることができた。
闘う姿勢、である。
明本はとにかく最後まで走り抜き、相手と体をぶつけ合った。小泉もいつも以上にボールに執着し、倒されれば珍しく怒りをあらわにした。
大分にとって最後まで脅威の存在となった江坂はGKに対してスライディングまで敢行し、ロングフィードを阻もうとした。
取り戻したのは、アジアの舞台に立つ権利だけではない
関根自身も何度ドリブルで仕掛け、多少強引であっても相手を抜き去ったことか。
6分には相手ふたりに囲まれながら突破を図り、江坂へチャンスボールを届けた。
70分には相手に引っ張られながらドリブルで突破し、決定的なスルーパスを放つ。
78分にも怯むことなくドリブル勝負を挑み、ファウルを獲得した。
この日のピッチでは、そうした気持ちのこもったプレーが数多く見られた。
込み上げてくるものの理由は、闘う姿勢にこそあった。
天皇杯で優勝した浦和は、今季の目標だったACLの出場権を獲得した。だが、浦和が取り戻したのは、アジアの舞台に立つ権利だけではない。
去りゆく漢たちがかつて背中とプレーで示した浦和らしさも、取り戻し始めている。
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