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浦和vs大分、ハイレベルな戦術合戦の末… 関根貴大とリカルドレッズが取り戻し、継承した「闘う姿勢」〈天皇杯〉

posted2021/12/21 11:04

 
浦和vs大分、ハイレベルな戦術合戦の末… 関根貴大とリカルドレッズが取り戻し、継承した「闘う姿勢」〈天皇杯〉<Number Web> photograph by Kazuhito Yamada/Kaz Photography

3大会ぶりの天皇杯制覇を果たした浦和レッズ。リカルド体制1年目にしてタイトルを手にした

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飯尾篤史

飯尾篤史Atsushi Iio

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Kazuhito Yamada/Kaz Photography

 込み上げてくるものを感じたのは、後半のアディショナルタイムだけではない。

 1点ビハインドの大分トリニータが後半、怒涛の反撃に出れば、体を張って凌ぐ浦和レッズが返す刀で仕留めに行き、それをさらに大分が食い止める。

 江坂任のゴールで浦和が6分に先制して以降、ゲームは1-0のままで進んだが、ファイナル特有の硬いゲームだったわけではない。

 激闘という表現がふさわしい内容――。

 そのまま1-0で終わったとしても、好ゲームであったことは間違いない。

 それなのに、あんな結末が待っているなんて……。

 12月19日に国立競技場で行われた天皇杯決勝は、90分に大分がペレイラのヘディングゴールで追いつくと、90+3分に浦和の槙野智章が起死回生のヘディングゴールを決め、劇的な幕切れを迎えた。

リカルドvs片野坂という両戦術家による駆け引き

 6年間指揮を執った片野坂知宏監督に有終の美を飾らせたい大分と、今季限りでチームを離れる槙野、宇賀神友弥、トーマス・デンを笑顔で送り出し、引退を決めたキャプテンの阿部勇樹に天皇杯を掲げさせたい浦和――。

 ドラマティックな背景は、この試合を語るうえで無視することはできないが、純粋にサッカーの試合としても見応えがあった。

 そのひとつが、リーグ屈指のふたりの戦術家による駆け引きである。

「大分は3バックで来ると想定して準備を進めてきました。中盤がダイヤモンドの4-4-2で来る可能性も分かっていましたが、選手たちを混乱させないようひとつに絞ったんです」

 浦和のリカルド・ロドリゲス監督は準備の内容について明かした。

 大分の主戦システムは3-4-2-1。しかし、準決勝では川崎フロンターレ対策として4-3-1-2を採用していた。

「アツキとアタルのふたりにだけ個別に」

 スペイン人指揮官は従来のシステムで来ると読んだわけだが、メンバー表を見て裏をかかれたことを知る。

「ロッカールームでのミーティングで選手たちに話しました。そのうえで、アツキ(伊藤敦樹)とアタル(江坂)のふたりにだけ個別に伝えました。大きく変えなくても、彼らのポジションだけを修正すれば対応できると思ったからです」

 こうして浦和はボール非保持には従来どおり4-4-2に構え、ボール保持時の際には左サイドハーフの小泉佳穂をインサイドに、左サイドバックの明本考浩を左ウイングに移して3-2-5のような形をとり、大分の4バックとアンカーの脇を攻略していく。

 すると今度は、片野坂監督がハーフタイムに修正を加えた。

【次ページ】 目まぐるしいほどの両ベンチの駆け引き

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