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バレーFC東京、突然の「活動休止」に選手の本音は? 長期離脱中のリベロ古賀太一郎は仲間に問いかけ「思っていることを吐き出せ」
text by
田中夕子Yuko Tanaka
photograph byJVA
posted2021/12/14 11:02
チーム活動休止の発表後、初めての公式戦となった天皇杯。FC東京は準々決勝で敗れたものの、不安を振り払うように一丸となって戦った
「最初は受け入れられなかったですけど、時間が経って考えればスポーツの歴史の中では起こり得ることだった。自分たちが当事者になれば悲劇のヒーローみたいになりますけど、コロナで倒産した会社や飲食店もたくさんあるわけですから。その結果を今は変えることはできないなら、僕たちはやることをやる。家族や応援してくれる人がいなくなるわけではないし、自分たちだけが『ショックだ』と言っていても何も始まらない。これからのために、選手は前を向いてやっていこう、と逆に1つにまとまった。だから今は不安も迷いもなくなりました」
未来に向けて今、やるべきことを果たす。その最初の機会が天皇杯のファイナルラウンドだった。
初戦は東亜大のサーブに苦戦しながらもストレート勝ちを収め、続く2回戦も同じVリーグのVC長野トライデンツに3-0で快勝。やや硬さが目立った初戦に比べ、1勝したことで余分な重圧から解き放たれ、攻守に渡り躍動した。
スパイク、ブロックで存在感を発揮した1年目のミドルブロッカー山田大悟は試合後、汗を拭いながら笑顔で言った。
「1年目からスタメンで出られているのに(チームが休部となり)かわいそう、と見られることもあるかもしれないですけど、むしろそう見られるのが嫌なぐらいで。僕は楽しく毎日バレーボールができているので、不安はないです」
突然の休部という決定に動揺しながらも、今できることをやろうと全員が同じ方向を向く。さらにもう1つ、チームを結束させる力になっているのが古賀の存在だ。
長期離脱中の古賀が送ったメッセージ
休部発表の3日前、駒沢で行われた堺ブレイザーズとのホームゲームで負傷。左アキレス腱断裂で全治8カ月と診断された。単純計算をするなら、再びプレーできる状態となった時に、チームがあるかどうかもわからない。長時間を要するリハビリも含め、一番落胆してもおかしくない。しかし休部の発表を受けた古賀は、選手同士でグループLINEをつくり「思っていることを全部吐き出せ」とメッセージを送った。
絶望のふちに立たされているような状況で周囲を慮る。その姿に自分たちが奮い立たされた、と手原は感嘆する。
「ケガして、手術して、戻って来るタイミングも場所もわからない。それでもポジティブな声をかけてくれるって、ハンパないですよね。ただでさえ自分がつらいだろうに、『やるか、やらないかだったらやるしかない』と。また古賀さんと一緒にバレーがしたい。だったら、僕たちもやるしかないですよね」