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93年日本シリーズ第7戦、野村克也は黄色から“ピンクのパンツ”にはきかえた「ゲンを担いで少しでも不安が取り除かれるのなら…」
posted2021/11/27 11:00
text by
長谷川晶一Shoichi Hasegawa
photograph by
Sankei Shimbun
第一戦、第二戦と連勝した。第三戦こそ落としたものの、第四戦は川崎憲次郎の圧倒的なピッチングで勝利し、三勝一敗と大手をかけた。
しかし、西武は王者の底力を見せて第五戦、第六戦と連勝して逆王手とした。
黄色いパンツか、ピンクのパンツか……
さまざまなゲン担ぎを行ってきた野村克也は、当然この日本シリーズでも沙知代夫人が懇意にしている占い師のアドバイスを積極的に取り入れていた。
「監督というのはどんなに準備をして、どんなに策をめぐらせても不安は消えないものなんだね。ゲンを担ぐことで、少しでもその不安が取り除かれるのならすがりたくなるものなんです。もちろん、それだけで勝てるなんて思っていないけど。……えぇ、もちろん93年の日本シリーズでもゲンを担ぎましたよ」
占い師によれば、この年の野村のラッキーカラーは黄色とピンクだという。
野村はそのアドバイスを忠実に実行した。
第一戦を迎える際に黄色いパンツを穿いた。初戦、第二戦と立て続けに勝利したのでパンツは穿き替えなかった。第三戦を落としたことで、第四戦は新しい黄色のパンツで臨んだ。ここでも勝利したので、そのまま第五戦に挑んだものの鈴木健の満塁弾に沈んだ。再び黄色いパンツを新調したが、その効果もなく第六戦も敗れた。
こうして迎えた第七戦。野村は今シリーズ初となるピンクのパンツを穿いた。
ここまで、三枚の黄色いパンツで三勝三敗だった。泣いても笑っても、これが最後の試合だ。野村は四枚目の黄色いパンツではなく、初めてとなるピンクのパンツを選択した。
これがはたして、どんな効果を生み出すのか?
野村にとって初めてとなる日本一を懸けた一日が始まろうとしていた。