濃度・オブ・ザ・リングBACK NUMBER
5年ぶりの死闘、RENAと山本美憂はなぜ“笑顔”だったのか? RENAが「ハッピーエンドにはさせない」と語った裏に《KIDとの物語》があった
text by
橋本宗洋Norihiro Hashimoto
photograph byRIZIN FF Susumu Nagao
posted2021/11/24 17:00
RIZIN.32のメインイベントとして行われたRENAvs山本美憂は衝撃的なKO決着に
「自分が輝けるのはやっぱりこの場所なんだな」
そのタックルの精度が高かったから、ピンポイントでヒザを合わせやすかったということもあるだろう(野球で言う“荒れ球”のような技のほうがカウンターを当てにくい)。いわば一流同士だからこその決着。美憂は連敗となったが、これで彼女の価値が落ちたとは誰も思っていないだろう。もちろんRENAの株はこれまでになく上がった。
「やっぱりRENAさんは特別だと思いましたね」
藤井とともに解説を担当した那須川天心の言葉だ。RENAはこれが1年2カ月ぶりの試合。前回の試合後「あと2、3戦でリングを降りようと思います」と引退をほのめかしたが、今では「もう少し先」だと考えている。むしろあと2、3戦で一番いい状態になっているはずだと。
アメリカのメジャー団体ベラトールへの再出陣が新たなモチベーションになっている。新しい練習も始め、強くなっている実感もある。加えて今回の勝利だ。那須川はこうも言っている。
「こんな勝ち方したらやめられないですよ」
凄く楽しかった、とRENAは試合を振り返った。
「帰ってきたな、自分が輝けるのはやっぱりこの場所なんだなって」
RENA「ハッピーエンドにはさせない」の真意
試合前には「ハッピーエンドにはさせない」という言葉もあった。それはKIDとの約束を果たさせはしない、というだけの意味ではなかった。リベンジに成功し、KIDとの約束を果たしたら、47歳の美憂は満足して格闘技をやめてしまうかもしれない。でも、まだまだ闘い続けてほしい。だから「ハッピーエンドにはさせない」なのだ。
美憂自身も「まだまだ」と思っていた。
「負けると悔しいんですけど、落ち込みはしないんですよ。いつもそうです。常に次のことを考えるので。今回もそう。ということは、まだ伸びしろがあるのかな」
ハッピーエンドにさせなかったRENAは「美憂さんがやめなくて余計にハッピーです」と笑った。強くなっている実感がある、だからもっと貪欲にいきたいというRENAは、目の負傷さえ問題なければ大晦日の大会に出てもいいとコメントしている。
榊原CEOはRENAだけでなく、美憂にも大晦日のオファーを出したいという。それがこの試合への評価だった。沖縄ならではのメインイベントであり、同時に“全国区”のクオリティとインパクトのある一戦だった。これを見せられたら、那須川ではないが「やめられない」に決まっている。RIZIN沖縄大会は来年以降も継続開催されていくそうだ。
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