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「家に帰るのは22時か23時」それでも少女はプロレスを選んだ “スターダムの申し子”渡辺桃の「赤いベルト」への執念<特別グラビア>
posted2021/11/21 17:00
text by
原悦生Essei Hara
photograph by
Essei Hara
「13歳の時でした。家族が全員プロレス好きで、スターダムを見ていたんです。子供心にリングで動くのって楽しそうだなあ、と思って『プロレスやりたい』って親に言ったら、すぐにOKだった。珍しい家ですよね」
女子プロレスラー・渡辺桃はスターダムとの出会いから語り始めた。両親がスターダムに連絡し、返事はすぐに来た。そして1週間後には練習生になった。
男子のプロレスは、主にドラゴンゲートを見ていたという。
「ドラゴン・キッドさんが大好きでした。空中殺法がカッコよくて! 今の私のファイトスタイルとは違いますけど(笑)」
中学校ではソフトボール部。部活をしながら並行してプロレスの練習にも通うことになった。
「中学2年生からはほぼプロレス中心の生活だったので、土日の日程が重なってソフトボールの試合にはほとんど出られなかったですね。平日の練習には参加していましたけど、ポジションをいろいろ試している間に終わっちゃいました。ソフトボールが強い学校(県大会3位)だったので、プロレスをやりながらではついていけなかった」
放課後、相模原から電車に揺られて東京の道場へ
ソフトボールではなくプロレスを選んだ少女は、相模原から電車に揺られた。
「学校に行って、それから新小岩の道場に行って、家に帰ると22時とか23時。学校でも疲れているのに、今思うとかなりハードでした(笑)」
渡辺はそれをつい昨日のことのように話した。運動が好きで足も速かったスポーツ少女の目に、スターダムの練習はどう映ったのだろう。
「練習はきつかったですね。最初は基礎体力づくりと、前転、後転から。風香さんに教えてもらったんですけど、厳しかった。ニコニコしながら厳しいメニューをやらせるんです(笑)。よく耐えたな、と思います」
約1年後の2014年11月、渡辺は彩羽匠(いろはたくみ)戦でデビューした。
「彩羽さんはすごく頼もしかった。大きいし、やさしい感じが全てを受け入れてくれる。私はやりやすかったですね。緊張はしていましたけど」
長与千種率いるマーベラスプロレスで“イケメン女子”として活躍する彩羽とは、デビュー戦以来シングルマッチはやっていない。
「そろそろシングルをやってみたい。9月、『5★STAR GP 2021』決勝での対決は実現できなかったけど、デビュー戦の相手と決勝を戦うのは夢のようなこと。来年チャンスがあれば、戦ってみたいです」