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「ボールに触りたくない…」湘南の“遠藤航2世”はアンカー恐怖症をどう克服したのか 田中聡19歳が語る「残留争いとパリ五輪」
text by
戸塚啓Kei Totsuka
photograph byGetty Images
posted2021/11/20 11:01
19歳という年齢を感じさせないプレーで湘南ベルマーレを牽引する田中聡。チームをJ1残留に導くことができるか
デュエルに勇敢で攻守にハードワークするのは、湘南ベルマーレというチームに息づく遺伝子だ。174センチ、70キロのサイズ以上に逞しさを増している田中の姿に、若き日の遠藤や齊藤を重ね合わせる関係者もいる。
田中は遠慮がちな笑みをこぼした。
「航さんと似ているとは思わないですけど、すごくお手本になります。東京五輪も観ましたし、ドイツでもあれだけ活躍していて、『すごいなあ』のひと言というか。A代表のボランチは何でもできる選手ばかりで、アンカーだけでは現代サッカーでは通用しないと思うので、色々なポジションをやりながら学んでいって、少しでも近づきたいです。未月くんとは1年間一緒にやらせてもらって、自分がプレーしたなかで一番球際が激しい選手でした。自分も1対1では誰にも負けないようにしていきたいですね」
19歳という年齢は「世界的に見たら全然若くない」
いまはとにかく、J1リーグに集中している。20日の仙台戦、翌週の徳島ヴォルティス戦と、6ポイントマッチが続く。「1試合でも早くJ1残留を決める」という思いが身体を貫くのだ。
「まだまだ全然安心できないですし、残り全部勝つつもりでやらないとJ1残留は厳しいと思っています。試合で使ってもらっている以上は、観ている人たちから『田中が試合に出ていれば勝てる』と思われるぐらいにならなければいけない。残り試合はすべてフル出場する意気込みで、毎日の練習から頑張っています」
プロとしては1年目のシーズンでも、「世界的に見たら全然若くはないです」と年齢をエクスキューズにはしない。むしろ、田中の胸中では勝敗に対する責任感が大きくなっている。
「19歳とか20歳ならチームの中心として活躍しないといけないですし、ベルマーレはいまの順位にいてはいけない。若さを言い訳にしないで、もっともっとチームを引っ張っていかないといけないと思います」
遠藤や齊藤も過ごしたグラウンドで汗を流し、練習からトライをして自信を磨いて、失敗から学びを得て、19歳は成長の歩幅を広げていく。現代サッカーで戦っていくために必要なベースを固めながら、自分を羽ばたかせていくための強みを、田中は磨いている。