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「ボールに触りたくない…」湘南の“遠藤航2世”はアンカー恐怖症をどう克服したのか 田中聡19歳が語る「残留争いとパリ五輪」
posted2021/11/20 11:01
text by
戸塚啓Kei Totsuka
photograph by
Getty Images
日本代表のカタールW杯アジア最終予選が年内の全日程を終え、ここから先の注目はJリーグへ移る。
J1では川崎フロンターレが2連覇を達成し、2位の横浜F・マリノスは来季のACL出場権を獲得した。3位のヴィッセル神戸も、11月20日の試合でアジアへの切符を獲得する可能性がある。
順位表のボトムハーフへ目を移すと、14位の柏レイソルまでは残留が確定している。その一方で、15位の湘南ベルマーレから20位の横浜FCまでの6チームが、勝ち点6差で競り合っている。
勝ち点33で15位の湘南は、20日の36節で19位のベガルタ仙台と対戦する。敵地での一戦で勝ち点3をつかめば、J1残留に大きく近づく。16位以下の5チームが得失点差のマイナスが「20」以上あるのに対し、湘南は「6」に止めている。勝ち点で先行しているだけでなく、勝ち点差で並んだ場合は圧倒的に有利なのだ。
「失敗しても死ぬわけじゃない」と山口監督は言った
その湘南でチーム4番目のプレータイムを記録しているのが、プロ1年目の田中聡だ。ここまで35試合のうち33試合に出場し、共同キャプテンの石原広教と岡本拓也、日本代表GK谷晃生に続く。2種登録選手だった昨季も17試合に出場したが、いまやユース出身のMFはチームに欠かせない選手となっている。8月31日付けで退任した浮嶋敏監督の指揮下でも、山口智コーチが新監督となってからも、背番号32はアンカーを定位置にピッチに立ち続けているのだ。
「敏さんには自分の調子が悪くても使ってもらっていて、智さんに替わってからは90分間フルに試合に出られるようになったりもして、後半戦はプレーしていてすごく楽しい思いが強くなりました。同時に、責任感というか、もっとチームを勝たせたい、貢献したいという気持ちも強くなっています」
プレーする楽しさを感じられているのは、苦しみを乗り越えたからでもある。7月11日のFC東京戦を持ち出して、田中は意外な事実を告白した。
「ボールを受けるのがすごく怖くなった時期があって。受けてもバックパスばかりだったり、前を向けなかったり……。自分がレッドカードで退場した東京戦の頃は、アンカー恐怖症じゃないですけどボールに触りたくない、受けるのが怖かったんです」
恐怖はすぐに消えない。だが、ピッチに立たない限り消すことはできない。東京五輪を挟んで再開されたリーグ戦から、田中は先発出場を続けていく。