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ドーピング検査時に見せた人間力、守り続けた“父との約束”…五輪2大会連続メダリスト・三宅宏実が愛されたワケ〈引退後は指導者の道へ〉
posted2021/11/19 17:00
text by
矢内由美子Yumiko Yanai
photograph by
JIJI PRESS
「東京1964」から「東京2020」までの57年という時間軸を、身長147センチの小さな体でつないだ。
重量挙げ(ウエイトリフティング)で12年ロンドン五輪、16年リオデジャネイロ五輪と2大会連続メダルに輝いた三宅宏実(いちご)が、このほど引退会見を開いた。
「21年間、大好きな競技を続けられて幸せでした」
「ウエイトリフティングは記録の競技。結果が数値で表れるからこそ、やりがいがありました。限界に挑戦し、更新することがうれしく、練習することがとても楽しかった。21年間、大好きな競技を続けられて幸せでした」
今夏は柔道の谷亮子と並ぶ日本女子最多の夏季五輪5大会連続出場を果たし、女子49キロ級に出場。スナッチで74キロを挙げたが、ジャークは3回すべて失敗して記録なしという結果となり、その時に引退を表明していた。
「東京五輪では残念ながら結果を残すことはできなかったですが、今出せる自分の限界だと納得できる大会でした」
すべてが思い通りに行ったわけではないが、自分で「これだけは」と思って大切にしてきたことを完遂したからだろう。口調はさわやかで、やり切ったという充実感が表情からもあふれていた。
偉大な父、伯父。「東京から東京」につなげた
伯父は60年ローマ五輪銀、64年東京五輪金、68年メキシコ五輪金の三宅義信さん(81歳)。父はメキシコ銅メダルの義行さん(76歳)。日本ウエイトリフティング協会によると、日本勢が獲得した通算15個のメダルの内、6個(金2、銀2、銅2)は三宅ファミリーが獲得したものだ。
「64年から今回まで、多くの方々にウエイトリフティングを知ってもらえたことは非常にうれしいです。これからも記憶の中にずっと残ってほしいなと思っています」
偉大な父、伯父。同じ道を歩むがゆえのプレッシャーがないはずもない。しかし、三宅は柔和な表情のまま、こう語った。