プロレス写真記者の眼BACK NUMBER
「小学校の先生が掲示板に東スポの記事を…」19歳でプロ9年目、スターダムの高速爆弾娘・AZMが女子プロレスに捧げた青春
text by
原悦生Essei Hara
photograph byEssei Hara
posted2021/11/19 17:02
未成年とは思えない、力強い視線をカメラに向けるAZM。「プロレスが青春。プロレスを通して大人になった」と濃密な10代を振り返った
AZMはコミュニケーション能力を気にしているが、しっかりと相手の目を見て話している。そしてやはり、19歳という年齢相応に饒舌だ。
「小学生時代は単純に楽しいプロレスだったんです。中学生のころは考えすぎちゃって、プロレスがつまらなくなった。キッズなのにちょっとキャリアはあって、どこをどうしたらいいかわからなくて、あがいて、迷走していました」
漫画『あずみ』から取られたという本名から、「AZM」にリングネームの表記を変えた。ひらがなからの変更は、キッズファイターというイメージからの脱却という狙いもあった。
「高校時代は、担任の先生がけっこうプロレスを見に来てくれました。『プロレスも頑張った。学校生活も頑張った。3年生の中で一番頑張ったのがあずみだ』ということで、卒業するときに奨励賞もいただきました」
スターダム初のグランドスラム(5大タイトル制覇)を達成したカリスマ・紫雷イオのユニットであるQQ(クイーンズ・クエスト)に入ったタイミングも重なって、高校生時代はまた楽しいプロレスの時間になった。試行錯誤していた時期も、今では懐かしく感じるという。
「今は落ち着きました。こんなにプロレスをやっていると思わなかったです。やっぱり続けるのは難しいと思う。自分で自分を褒めたい(笑)。来年、20歳になるとプロとしてのキャリア10年目ですよ。すごいです、本当に。(双子レスラーの)吏南ちゃん、妃南ちゃんも小学6年生でデビューしているから、いずれ私と同じようになるかもしれませんね」
「プロレスを始めて、楽しいことしかなかった」
AZMには忘れられない試合があるという。2020年2月24日、大阪府立体育会館第2競技場。ワールド・オブ・スターダム王座を8度防衛した花月の引退興行で組まれたカードだった。
「私vs小林香萌vs駿河メイの3WAY。スターダムは他団体と関わることが少ないんです。でも、もっと他団体の選手と関わりたいなあ。すごく新鮮だったから。この試合をスマホに保存して、たまに見返しています。心からプロレスを楽しんでいる。あの空間が好きでした」
しみじみと思い出を振り返るAZMの顔も、やはり楽しそうだった。
「プロレスを始めて9年間、楽しいことしかなかった気がします。もちろんイヤなこともあったと思いますけど、それ以上に楽しいことが山ほどあったので。苦労したのは、3月にハイスピード王座を落とした後かな。ベルトって落とした後が本番というか、そこから自分をどうアピールすればいいか……。『AZM落ちたな』って言われたくないじゃないですか! でも今年の『5★STAR GP 2021』で活躍できたから、プラマイゼロみたいな感じかな。ビッグマッチでタイトルに挑戦することも増えているし、いい風向きになっていますね」