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たむ&白川&ウナギ「コズエン」の物語は“愛憎混じったメロドラマ”…白いベルトをめぐる同門対決は何を意味するか?《スターダム》
text by
橋本宗洋Norihiro Hashimoto
photograph byNorihiro Hashimoto
posted2021/11/18 11:00
コズミックエンジェルズの3人。左から、ウナギ・サヤカ、中野たむ、白川未奈。
タッグ戦で見せた新技グラマラスドライバーMINA
たむとしては、防衛ロードは辛いからこそやりがいがある。痛くて苦しい闘いだから「命を燃やしている」という実感がある。岩谷麻優という「まだ倒さなきゃいけない相手」もいる。「戦友の想い」も背負っている。白いベルトは引退したタッグパートナー・星輝ありさが巻いていたものだ。
現パートナーの白川は、過去にとらわれてほしくない。大事なのは過去より今ではないか。だから“呪い”を解きたい。だが、たむには過去があってこその今。たむと白川もまた、同じものの裏表をめぐってぶつかっている。同じユニットだから、愛があるからそうなる。
11月14日の後楽園ホール、タッグリーグ最終戦に登場したたむ&白川。試合は白川が新技グラマラスドライバーMINAを決めて勝利を収めた。自分のことをすべて知っているというたむに対しての「こんな技があるの知ってた?」というアピールだった。
自分は過去に勝てないのか。タッグパートナーとして不適格なのか。自分に腹が立つと試合後の白川は言った。それなら岩谷麻優と星輝ありさごと自分を超えてみろとたむ。ギラついた目でベルトを凝視する白川を、たむは呆れたように突き放した。
「絶対的な信頼があるから」
愛憎がどんどん煮詰まっていく。たむとウナギ、たむと白川。その濃厚な関係は、ほとんどメロドラマと呼びたくなるものだ。
愛があるから呪いが生まれる。信頼しているから激しい試合ができる。たむvs白川を見守る立場になったウナギは言った。
「コズエン対決にやりにくさはないです。むしろコズエン対決だからなんでもできる。絶対的な信用があるから“この人にならどこまでやっても大丈夫”と思えるんです」
ウナギとたむがそうだったし、たむと白川も間違いなくそうなる。そしてウナギと白川も。
「面白いことにたむさんともみなちゃんとも2回ずつやって1勝1敗なんです。どっちとももう1回と思ってますね。白いベルトはまた絶対に獲りにいくし、今回みなちゃんが勝てばみなちゃんに挑戦したい。どっちに対しても愛があるしどっちにも負けたくない」(ウナギ)
仮に白川とウナギが白いベルトを争うことになっても、愛の分だけ激しい試合になるはずだ。“どっちが強いか”以外のものまでかける白いベルトの闘いには、プロレスの最もプロレスらしい部分が凝縮されているように思える。
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