濃度・オブ・ザ・リングBACK NUMBER
たむ&白川&ウナギ「コズエン」の物語は“愛憎混じったメロドラマ”…白いベルトをめぐる同門対決は何を意味するか?《スターダム》
text by
橋本宗洋Norihiro Hashimoto
photograph byNorihiro Hashimoto
posted2021/11/18 11:00
コズミックエンジェルズの3人。左から、ウナギ・サヤカ、中野たむ、白川未奈。
「このリングには私の知らない感情が死ぬほど転がっている」
「もっと辛い思いして、もっと泣いて、もっと自分と向き合って、もっと強くなれ!」
勝ったたむはウナギにエールを送った。試合直後「このリングには私の知らない感情が死ぬほど転がっている」と語ったウナギは、ベルトへの思いをさらに強いものにした。
スターダム参戦から1年でワンダー王座に挑戦するところまできた。そこに感慨もあるのではないかと聞くと、彼女はこう答えている。
「感慨? いや、ないですよ。まだ何も掴めてないので。掴めた時に、また同じことを聞いてください」
これまで挑戦してベルト奪取に失敗したタイトルマッチ(SWA世界王座戦、タッグ王座戦)には“チャレンジマッチ”の雰囲気があったとウナギ。「どっちが勝つか」ではなく「チャンピオンの防衛は堅いが、挑戦者がどれだけ頑張れるか」の試合だったと言えばいいだろうか。得意技を出すことすらできずに終わってしまったとウナギは振り返る。
「でも今回は違ったんですよ。一番の得意技(大儀であった)も決めたし。いま自分が持ってるものを全部出せた。魂の潰し合いだったと思います。その上で負けましたけど、次は結果を出す段階だと思ってます。来年はいろんな人を食います。たくさん食べます(笑)」
白川「中野たむからベルトを奪う選手は私でありたい」
セコンドとしてたむvsウナギを見ていた白川は、試合直後にたむに挑戦表明した。試合に感動したからだった。
「素直に感動しちゃいましたね。お互いが信頼し合っているからこその激しさだったと思います。でもウナギには(白いベルト挑戦で)先を行かれた。悔しさもあります」
2人の闘い=関係性を超えるには、もっと凄い試合をして結果を出すしかない。白川はそんな思いに駆られたのだ。
「中野たむからベルトを奪う選手は私でありたい。コズエンで一緒にやってきたからこそ、そう思いますね。私もプロレスは“愛”だと思うので」
11月8日のタイトルマッチ調印式での白川は、自分が勝つことで「たむさんを心も体も楽にしてあげる」と言った。むき出しの気持ちを激しい技とともにやり取りするタイトルマッチを重ねる姿が辛そうに見えて仕方ないと。
ワンダー王座の初代チャンピオンは“グラレスラー”愛川ゆず季。華のある人気選手が巻いてきたベルトというイメージもある。「豪華絢爛、そんな言葉が似合うベルトに」と白川。“呪い”を解こうというのだ。