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《マイルCS》藤沢和雄師が28年前のGI初制覇前に取った“まさかの行動”とは? シンコウラブリイからグランアレグリアまで変わらない信念 

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平松さとし

平松さとしSatoshi Hiramatsu

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photograph bySankei Shinbun

posted2021/11/19 11:01

《マイルCS》藤沢和雄師が28年前のGI初制覇前に取った“まさかの行動”とは? シンコウラブリイからグランアレグリアまで変わらない信念<Number Web> photograph by Sankei Shinbun

1993年のマイルチャンピオンシップを制したシンコウラブリイ

30年前、藤沢調教師がジョッキーを諭した言葉

 シンコウラブリイとのエピソードで、もう1つ思い出される事がある。今から30年前、当時まだ40歳の頃に言っていた言葉を最後に紹介しよう。

 それはシンコウラブリイの2戦目が終わったばかりの時の話だった。先に紹介した通り新馬戦勝ち後、福島で連勝を飾ったシンコウラブリイ。その走りぶりは鞍上が終始持ったままで2着馬にいわゆる「おいでおいで」をするような競馬だった。2着から3着までは6馬身も千切れたのだが、シンコウラブリイと2着マイネルヤマトの差は僅か半馬身。しかし、必死に追いすがるマイネルヤマトをしり目にシンコウラブリイは終始涼しい顔という感じ。その鞍上で騎手の手は全く動かない。追うでも叩くでもないその手応えの差は明らかで、着差以上に力差があると誰もが思う競馬となった。

 そんなレースが終わった直後、藤沢和調教師はシンコウラブリイに騎乗したジョッキーに対し、諭すように言った。

「次に同じようなケースがあった場合、もっと早目に先頭に立って、押しても良いから突き放し、差が開いたところで抑える競馬をしてください」

 そして、この言葉の真意を次のように続けた。

「ああいう形の競馬をすればシンコウラブリイも最後まで休まるところがないし、負けた馬の方も最後まで鞭を入れられてかわいそう。勝負あったという態勢にしてしまえば2頭とも楽になるし、それは当然、怪我などのリスクも回避出来ます」

 自らの管理馬だけでなく、全ての競走馬に対し包み込むような広い視野を持っている姿勢と信念に感服させられたものである。

名伯楽、最後のマイルCS挑戦

 それから30年が過ぎたが、今でも伯楽の思想に変わりはないだろう。そんな藤沢和調教師だが、皆さんご存知のように来年の2月には定年によって厩舎を解散する。今年のマイルチャンピオンシップには連覇を目指すグランアレグリアを出走させる。通常は京都で行われるこのレースだが、今年も昨年同様、阪神で開催されるのはディフェンディングチャンピオンにとっては追い風となるか……。伯楽にとってこれが最後のマイルチャンピオンシップ挑戦となる。シンコウラブリイのような結末が待っている事を願いたい。

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