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量より質の練習で狙うキャリアハイ…ベイスターズが全員参加の秋季トレーニングを「キャンプ」と呼ばない理由とは
posted2021/11/15 11:01
text by
石塚隆Takashi Ishizuka
photograph by
YDB
実りの秋――選手たちは紅葉色づくなか練習で汗をかいていた。悔しさを胸に秘めながら長所を伸ばし、欠点を補う。
今季6年ぶりに最下位に沈んだ横浜DeNAベイスターズは来季に向け11月4日、秋季トレーニングをスタートさせた。例年であればこの時期、若手を中心に奄美大島で秋季キャンプを行っていたが、段階を経て、今年は最新の設備が整ったファーム施設『DOCK OF BAYSTARS YOKOSUKA』と、隣接する『横須賀スタジアム』で練習を行っている。
この秋季トレーニングの特筆すべき点は全体練習も実戦形式もなく、選手個々に合った緻密なプログラムに則り練習をしているということだ。ゆえに名称も“キャンプ”ではなく“トレーニング”となっている。
DeNA体制になって10年、初期のころは投げ込みや特打、特守などでストイックに追い込む、いわゆる“地獄のキャンプ”を行っていたが、年数を経ることで練習内容が見直され“質より量”から“量より質”のトレーニングにシフトしていった。
11月はあえて全体練習をやらない
なぜこのような試みに至ったのか、秋季トレーニングのシステムを構築した中心人物である桑原義行氏に訊いた。桑原氏は元選手であり、現在は球団でファーム運営と人材開発のリーダーを務めている。
「この試みは2019年に野手は奄美大島、投手はDOCKという分離キャンプからスタートしています。2月の春季キャンプ半ばから10月のシーズン終わりまで選手たちは実戦に身を置いているわけですが、11月の秋季キャンプまで全体練習に使ってしまうと、いちプレーヤーとしての能力やポテンシャルを上げる時期がなくなってしまいます。また11月にいくら実戦的なことをしても、オフの12月、1月の2カ月間で実戦感覚は失われてしまいます。そこで11月は個々のトレーニングに充て、また課題をスタッフと一緒に見つけ、それをオフ中も継続してパワーアップした状態で2月の春季キャンプを迎えてもらいたいと考え、この数年徐々に形を変え取り組んできたものです」
とにかくプレーヤーとしての可能性を追求すること。またプロ野球界の慣習で、シーズンを戦った主力選手やベテランは秋季練習を免除されることがあるが、この秋季トレーニングは全員参加が原則となる。これについて桑原氏はつづける。