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一軍登板は“わずか1試合”…日ハム・吉田輝星(20)に二軍コーチが“前代未聞のストレート縛り”を課したワケ
posted2021/11/15 06:00
text by
石田雄太Yuta Ishida
photograph by
KYODO
一軍での登板は1試合、勝ち星はゼロ――飛躍を期していた吉田輝星にとって、プロ3年目は不本意なシーズンとなった。しかしこの1年、吉田はやがて土の下から芽を出し、大輪の花を咲かせるために水と光、空気を与えられてきた。
「今年は二軍の試合でストレートだけを投げるよう課題を出されて、ああ、これは当分、一軍には行けないんだろうなと腹を括りました。一番長くて4回までストレートしか投げなかった試合もありましたからね」
前代未聞のストレート縛りは、吉田の潜在能力を信じるからこその育成法だ。木田優夫二軍コーチが言う。
「相手がまっすぐしか投げてこないとわかっていても構いません。まっすぐを狙っているバッターにまっすぐを投げて空振りやファウルを取れなければ、一軍では通用しません」
“ストレート縛り”で気がついたこと
開幕の時点ではローテーションの6番目に滑り込んだ。4月2日、札幌ドームでのマリーンズ戦に先発した吉田だったが、2回7失点でノックアウトされる。ここは付け焼き刃の調整ではなく、命綱であるストレートを根っこから鍛え直す必要があると判断され、吉田は二軍行きを告げられる。ただ、イースタンとはいえ公式戦での吉田に対するストレート縛りは、ファイターズの本気度を示していた。吉田が言う。
「最初は興味本位で何だか楽しそうだなって思ったんスけど(笑)、そんなに簡単じゃないことがすぐにわかりました。だから僕、3つのことを考えました。まずストレートの中で緩急をつけること。できるだけ本気の球を見せずにこんなもんかと思わせといて、一発ぶち込む。次に四隅の投げ分けを大事に考える。3つ目はいかに力感なく、全力で投げられるか。宮西(尚生)さんから『お前は8割の力で投げられれば最強や』って言われていて、でも8割で投げると8割の球しかいかないイメージだったんスけど、練習してるうちに力の入れどころがわかってきたんです。そこからまっすぐだけでも抑えられるようになりましたね」
今年は二軍で6勝を挙げ、8月にはファーム月間MVPも受賞。水と光と空気が花を咲かせる日も近い。
「雑草魂がありますからね。そこは僕の原点なんで……ギューンって砂埃舞うような、そんなイメージで投げないとやってられませんよ(笑)」