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井上尚弥でも進まない「統一王者」を“たった1年弱”…カネロはなぜ実現できたか?〈意外と知らない複雑なFA事情〉 

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杉浦大介

杉浦大介Daisuke Sugiura

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posted2021/11/11 17:04

井上尚弥でも進まない「統一王者」を“たった1年弱”…カネロはなぜ実現できたか?〈意外と知らない複雑なFA事情〉<Number Web> photograph by Getty Images

史上2位の超スピードで「スーパーミドル級統一王者」となったカネロことサウル・アルバレスと、井上尚弥

 昨年4月、カシメロとの3団体統一戦のラスベガス開催が一度は決まりながら、パンデミックのおかげでやむなくキャンセル。その後、しばらく無観客興行を余儀なくされたことによるトップランク/ESPNの予算削減、井上自身を含む同階級の王者たちへの指名戦義務付け、外国から日本に入国する際の隔離政策などがネックになり、なかなかビッグファイトを実現できなくなった。バンタム級ではプロモーターの違いはそこまで大きな問題にならないだけに、パンデミックさえなければ、この階級でもすでに4団体統一王者が生まれている可能性は高かったはずだ。

 もちろん、パンデミックによって様々な弊害を余儀なくされているのは井上だけではない。そして、こんな世界情勢下でもこの11カ月間に他団体との2度の王座統一戦を含む4度の世界タイトル戦を実現させたカネロは幸運だったのだろう。それと同時に、現代リングでは別格の存在とも言えるのかもしれない。

1年弱で4冠王者を可能にした“カネロの凄さ”

 ハイペースで試合をこなしたいという本人の“強い意思”、選手を含む関係者がどの試合時にもコロナに感染しなかったという“幸運”、そして何より、リングに立つたびに巨額マネーを生み出す“莫大な商品価値”がすべて合わさることで、1年弱での王座統一という偉業は可能になった。

 過去の薬物騒動などのおかげで依然としてアンチも多い選手だが、今回の偉業はやはり無視できない。一般的にパウンド・フォー・パウンドNo.1と認められながら、同時に現役選手の中で誰よりも“戦うチャンピオン”でもあり続けていることは、様々な観点から評価されてしかるべきであると思えてくるのである。

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