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新庄剛志は森本稀哲と稲葉篤紀いわく「気遣いの人」? 90~00年代のカリスマ監督、現代の「引く」監督像とも違う“期待感”とは
text by
花田雪Kiyomu Hanada
photograph byHideki Sugiyama
posted2021/11/03 11:03
日本ハム時代、数々のパフォーマンスで楽しませた新庄剛志。監督としてどのようなスタンスを取るのか
「新庄さんには、とにかくいろいろなことを教えてもらいました。技術的な面もそうですが、『プロ野球選手とは、こうあるべきだ』みたいな姿勢を、その姿から学びましたね。あとは、若い選手を本当に『よく見てくれている』。僕だけじゃなく、いろいろな選手に積極的に声をかけてくれて、チームを盛り上げてくれました」
侍ジャパンの監督に就任する前の稲葉篤紀からも、こんな話を聞いたことがある。
「派手なパフォーマンスが話題になることが多かったですけど、その裏には『自分以外の選手にも注目して欲しい』という思いがあったはずです。私自身も巻き込んでもらったことがありましたけど(笑)、どうやったらファイターズの選手が注目を浴びることが出来るのか――。そのために率先して動いてくれたのが、新庄さんでした」
また、これは筆者が直接聞いたわけではないが、ダルビッシュ有も自身のYouTubeで、プロ1年目に問題を起こして謹慎処分を受けた後、新庄が気にかけてくれたというエピソードを語っている。
このように新庄氏は現役時代、自身だけではなくたびたび周囲の選手を巻き込んでチーム全体を活性化させた。なにより、ただの「目立ちたがり屋」なら、現役最後、日本一を決めた試合で監督より先に胴上げされるようなことはなかっただろう。
そう考えると、新庄監督が時代の流れや現在の選手の特性をしっかりとつかみ、2020年代のトレンドに沿ったスタイルを見せてくれることも期待できる。
新庄に求められるのは、トレンドに沿うことではない
しかし、である。
実は筆者は、新監督・新庄剛志に少し違う期待をしている。
確かに今、時代は上に立つ人間に「引きの美学」を求めているかもしれない。
これには、コロナ禍によって鬱屈とした空気が2年近く続いていることも、大きく影響しているように思える。ただ、コロナ禍も終息に向けたわずかな光が見え始め、プロ野球の世界も観客動員制限が緩和されつつある。
この暗い時代が過ぎ去れば、新しい時代がやってくる。そんな時、監督・新庄剛志に求められるものは何か――。それは、時代の流れを読み、トレンドに沿うことではない。新庄剛志は、時代の流れを作り、トレンドを生む存在であるべきだ。
阪神からニューヨーク・メッツに移籍したときも、メジャーから日本ハムにやってきたときも、そうだった。監督就任発表の直後、新庄氏は自身のTwitterでこう呟いている。