「姿勢や自分の発する言葉から、どんどん変えて行こう。そうしたら前向きに、いい方向にいくんじゃないかって。ミスして笑うのは違うかもしれませんが、下を向いているよりは、ぐっと表情を引き締めたりとかね。今年は哲人も凄くいい顔をして野球をやっていましたから。チームも勝ちだして、優勝に向けてどんどんみんながいい表情になっていったのが本当に嬉しかった」

　阪神、巨人とのデッドヒートの中でも試合ごとに逞しさを増し、一気に頂点へ駆け上がったスワローズの選手たち。生き生きとした表情と躍動の陰には、こんな意識改革もあったというわけだ。

「僕が出来なかったからこそ、ですね」

　森岡コーチ自身、プロ入り後は守備や試合にのぞむメンタル面について壁に当たり、研究を重ねて試行錯誤を繰り返してきた。その経験を、今度は指導者として選手たちに伝えることに喜びを感じているという。

「僕が出来なかったからこそ、ですね。とにかく選手のため、チームのために、というのが一番。自分も成長していきたいと思っています」

　一軍コーチに就任した2年前から、春季キャンプでは毎朝球場に一番乗りして一人、周辺のゴミ拾いをするのが日課だ。今年は100円ショップで購入したというトングを片手に「ゴミを拾っていると視野が広くなる気がするというか、今まで気づかなかったことにも目が向くんですよ」と楽しそうに話していた。

　ヤクルトが最下位から一気に頂点に駆け上がった背景には、若い選手たちに慕われる“兄貴分”との分厚く熱い信頼関係があった。