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「間違ってなかったな」体操・村上茉愛が《世界体操で優勝して引退》で晴らした“東京五輪唯一の心残り”とは
posted2021/10/31 06:02
text by
松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph by
Asami Enomoto
涙と、そして笑顔が広がった。
体操の村上茉愛は、北九州市で行なわれた世界選手権の最終日に平均台とゆかの2種目の決勝に出場。平均台で金メダルの芦川うららとともに銅メダルを獲得すると、代名詞とも言えるほど得意としてきたゆかでは金メダルを獲得した。
18日のゆかの予選では、銅メダルを獲得した東京五輪決勝と同スコアの14.166点をマーク。
「オリンピックくらい、いい演技ができました」
と満足気に振り返る好演技で、予選では首位に立つ。
迎えた決勝。H難度の大技である「シリバス」を成功させたのをはじめ、まとまりのある演技を披露。最初に出た得点は13.966点だったが、「インクワイアリー」(問い合わせ=ジャッジに採点の確認を求めること)を行使。結果、14.066点となり、優勝を決めた。
閉会式の後、会場でマイクを手にした。
「私は今日で引退します。最後の最後に金メダルで、感動を少しでも届けられたんじゃないかと思います」
足を痛め、万全ではない状態での試合だった。その中での演技は金メダルという成績だけでなく、体操人生を締めくくるにふさわしい出来栄えだった。
五輪銅メダルの達成感
もともとは東京五輪を集大成の場として見据えていた。
オリンピックでのゆかでの銅メダルは、日本女子として57年ぶりの表彰台であった。自身が悲願としてきたオリンピックでのメダルを手にした瞬間でもあった。
「リオデジャネイロ(五輪)のゆかで7番になって悔しくて、『東京を目指そう』と決めて。あれから5年間やってきて、あきらめなくてよかったです。辛いこともある中で乗り切っての銅メダルは自分へのプレゼントかなと思います」