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「毎日が、地獄みたいな日々」を乗り越えたオリックス“高卒大型ショート”紅林弘太郎(19)、スカウトも驚く成長の裏に何が?
text by
米虫紀子Noriko Yonemushi
photograph byKYODO
posted2021/10/23 11:03
今季ショートのレギュラーに定着した紅林弘太郎。強肩を生かした守備やホームラン10本という記録は、さらなる飛躍を予感させる
普通ならプレッシャーに押しつぶされてもおかしくない、真価が問われる負けられない戦いの中で、どっしりと構えて本領を発揮しているとは大物である。
レギュラーシーズンの本拠地最終戦となった10月21日の西武戦では、三遊間を抜けそうな打球に素早く追いつき、体を反転させながら二塁へ正確に送球してアウトを取り、先発した同学年の宮城大弥を救った。打っても、レフトへの強烈なライナーが相手の失策を招いて2点が入り、優勝に希望をつなぐ貴重な白星に貢献した。
手塩にかけた紅林について、試合後、中嶋監督はこう評価した。
「本当に戦力として僕らは見ていましたし、実際にしっかりと戦力の中に入ってきて、あの(10月10日の)デッドボールの時でさえ、いなくなったら困るという選手にまでなったというのは大きいと思います」
一時は「地獄」とまで感じた紅林だが、今では「監督には感謝しかない」と言う。
「ここまできてみると、短かったですね。あと1試合、絶対勝てるように頑張ります」
昨年8月、二軍監督から一軍監督代行に就任した際の記者会見で、「勝利と育成のバランスは難しいところですが」と問われた中嶋監督は、こう答えた。
「そこに挑戦していくのが我々の仕事なので。どっちも取りにいきたいと思います」
紅林を筆頭に、中嶋オリックスの“育成”は誰もが認めるところ。あとは“勝利”だ。
2位ロッテの結果次第ではあるが、首位オリックスは、悲願の優勝を手繰り寄せるために、ラスト1試合、25日の楽天戦にすべてをぶつける。