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「自分が頑張ってきた証拠かな」渡邊雄太を救った、あるベテラン選手の言葉とは? 《NBA本契約で迎える4年目》
text by
宮地陽子Yoko Miyaji
photograph byGetty Images
posted2021/10/22 11:00
プレシーズンゲームでダンクシュートを決める渡邊雄太。故障で出遅れたものの、充実した気持ちでNBA4年目に臨む
ラプターズ2年目となる今季のトレーニングキャンプでも、渡邊はまた開幕ロスター枠をめぐって競争しなくてはいけなかった。4月に交わした契約の2シーズン目は部分保証で、開幕ロスターに残ることで全額保証となる。似たような立場の選手が4人いて、3枠を争っていた。
それでも、今は2年前のようなフラストレーションは感じていなかった。ラプターズではニック・ナースHCが渡邊のディフェンスやバスケIQの高いプレーを評価してくれていた。自分の持ち味を発揮できる状況でプレーできる毎日は充実していた。そこに残るための競争ですら、楽しくてしかたなかった。ドラフト外からNBAに入り、毎年、ロスターに残る保証がないなかで、競いながら自分の居場所を見つけてきたのだ。
NBA選手として迎えた初の開幕
渡邊はトレーニングキャンプ中に左ふくらはぎを故障。プレシーズン試合は1試合に出場しただけで、残りの試合には出られなかった。それでも、10月18日に開幕ロスターが発表されたときには、そこに名前を連ねていた。NBA4季目にして、初めてNBA選手として迎える開幕だ。
NBAで4シーズン目を迎えることについて夏に聞いたとき、渡邊からはこんな言葉が返ってきた。
「客観的に見たら、けっこうすごいことをやっているというか。(NBAでは)4年生き残れる選手ってなかなかいないですし、自分も立場的には、ずっと一切楽ができない状態のなかで、こうやって4年目を迎えられるっていうのは、本当に、自分が今まで頑張ってきた証拠かなというふうに思う。そこは本当に自信をもって、この4年目を──大変な1年にはなると思いますけれど、楽しんでやっていけたらなと思っています」
謙虚な物言いが多い渡邊にしては、珍しく、少しだけ自画自賛が入った表現だった。
そのなかには、NBAに足を踏み入れてからのこの3年の間にどれだけ多くの経験を積んできたか、そして苦しいなかで思わぬ受けた激励の言葉などを糧に、前を見続けてきたかが凝縮されているかのようだった。