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「自分が頑張ってきた証拠かな」渡邊雄太を救った、あるベテラン選手の言葉とは? 《NBA本契約で迎える4年目》
posted2021/10/22 11:00
text by
宮地陽子Yoko Miyaji
photograph by
Getty Images
「君のサマーリーグのプレー、見ていたよ」
渡邊雄太は自分をマークしていたベテラン選手から突然、そう声をかけられた。
2020年2月5日、メンフィス・グリズリーズ対ダラス・マーベリックス戦でのこと。当時、グリズリーズのツーウェイ契約(NBAチームと傘下のGリーグチームを行き来する契約)選手だった渡邊は、二桁点差がつき、勝敗が決した試合の最後の1分13秒だけ試合に出ていた。ゲームクロックが20秒を切り、試合終了のブザーを待つだけの状態になったなかでそう声をかけてきたのは、当時マーベリックスに所属していたコートニー・リーだった。
渡邊にとっては、中学生のときにオーランド・マジックでルーキーとしてプレーしていた彼を見て以来、お気に入りの選手のひとりだった。その後、いくつものチームを転々と渡り歩き、息の長い34歳のベテラン選手として、渡邊の前にいた。
そんな選手から声をかけられたことに驚いていたら、リーは続けて言った。
「君はすごくいいプレイヤーだから、チャンスがあれば絶対に活躍できる。今はとにかく頑張れ。努力し続けるんだ」
思いがけない言葉に力をもらえることがある。この言葉も、渡邊にとってはそんなひと言だった。
渡邊はこのとき、試練の時期を過ごしていた。NBAでのキャリアをスタートさせて2シーズン目。グリズリーズは前シーズン後にフロントやヘッドコーチが交代し、ロスター構成も変わった。その影響もあって、渡邉がグリズリーズに呼ばれて試合に出る機会は減っていた。