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「自分が頑張ってきた証拠かな」渡邊雄太を救った、あるベテラン選手の言葉とは? 《NBA本契約で迎える4年目》 

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宮地陽子

宮地陽子Yoko Miyaji

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photograph byGetty Images

posted2021/10/22 11:00

「自分が頑張ってきた証拠かな」渡邊雄太を救った、あるベテラン選手の言葉とは?  《NBA本契約で迎える4年目》<Number Web> photograph by Getty Images

プレシーズンゲームでダンクシュートを決める渡邊雄太。故障で出遅れたものの、充実した気持ちでNBA4年目に臨む

 Gリーグでの試合では活躍できているという手ごたえがあった。実際、この少し前、1月中旬には、2試合続けてダブルダブル(得点とリバウンドで二桁を記録)をあげ、また別の試合では40得点をあげて、いずれもチームを勝利に導いていた。成長しているという実感があったからこそ、NBAでもそれが通用するのか、試したくてしかたなかった。そんななか、久しぶりにグリズリーズに招集がかかった。

 期待に胸膨らませて遠征に帯同したが、結局、勝敗が決した終盤にわずか数分の出番をもらえるかどうか。

 いつでも与えられた環境で全力を尽くすことを心がけ、たとえ1分でも、コートに立ったらできる限りのプレーをしようとしていたが、もっと早い場面、勝敗が決する前に出たいという気持は強くなるばかりだった。この日も、1分13秒の間にコートを2往復半し、リバウンドを1本取っただけで試合終了。フラストレーションをため、心の中では「僕のグリズリーズでの役割って何なんだろう」と悶々としていた。どれだけ成長を感じていても、NBAのコートで結果として出さないことには次の契約にもつながらないと、焦る気持ちもあった。

 そんな時に、NBAがテレビの中の世界だったときから見てきた選手が、声をかけてくれた。自分のプレーを見て、評価してくれていた。今、思うようにいかなくても、心折れることなくがんばれと励ましてくれた。暗闇のなかでの光のようでもあった。

「マジックで彼が活躍していたときから、すごく印象に残っていて、大好きだった選手だったので、そういう選手が僕に声をかけてくれたのは本当に嬉しかったですね」と、渡邊は振り返る。

「ああいう、NBAのなかでもかなり経験があるすごい選手が、僕みたいな選手でも見てくれているんだって思ったら、すごく嬉しくて、自信になりました」

ラプターズ移籍、開幕ロスター入り

 それから14カ月後の2021年4月、渡邊はトロント・ラプターズでNBA本契約選手になった。グリズリーズからラプターズに移籍し、昨季はトレーニングキャンプに参加するだけの契約からツーウェイ契約選手となって開幕ロスターに生き残り、さらにシーズン半ばに本契約にサインした。苦しい時期を乗り越えたからこそ、その喜びはひとしおだった。

【次ページ】 NBA選手として迎えた開幕

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