暗闇の虎ブラックタイガー（マーク・ロコ）は、タイガーマスク（佐山聡）のライバルだった。

「スターダムのお客様は昔から見ている方も多いから、ちょっと昔の味覚を刺激する。そして、オリジナル技も使うことで新しい世界が見える。私には黒虎天罰と、タイガースープレックスの変形でスタースープレックス・ホールドというオリジナル技がある。それで、ハイスピードのベルトを取った」

「今でも大好き」岩谷麻優を超えるために選んだ道

　岩谷麻優が「キッドがSTARSに戻ってきたら、STARSのリーダーにしたい」という話をしていたことをキッドに投げかけてみた。

「強制的な移動だったから、今でも岩谷麻優のことは大好き。STARSのことも大好き。そんなにすぐに忘れられるはずがない。気持ちはSTARSにいるのに、体は大江戸隊にいる。すごく葛藤していて、自分でもどうしたらいいかわからない。でも自分の意思で戻るのはルール的にダメだな、と。いざ気持ちを固めた後に、あの5対1が決まって『ちょっと遅い』とまた葛藤しました。

　私は岩谷麻優を超えるために、大江戸隊という場所にいる。私1人を取り戻すために5対1をやって、結果、岩谷麻優は勝った。でも、運命的に離れてしまったチャンスを無駄にしたくない。あんな岩谷麻優を見せつけられたら超えたくなるでしょう」

　9月25日、大田区総合体育館『5★STAR GP 2021』の公式戦で、キッドは岩谷と当たった。

岩谷麻優に『黒虎天罰』を決めるキッド

「なんとしても勝ちたかった。勝ったら決勝に行けたわけだから。だけど、大江戸隊の手は借りたくない。真っ向勝負に行って完敗。でも、悔しいんだけど、自然と笑顔になっている自分がいた。岩谷麻優から握手の手を差し述べられたとき、ここで握手してしまったら『まだまだだな』と思って張った。頭をガッと掴まれて『何かされる！』と思ったら、抱きしめられて……突き飛ばされました。

　ずるい！　本当にずるい。普通キレるし、なんだこいつと思うだろうし。『いつでも待ってるからね』とか……。岩谷麻優の心の大きさが分かった。私は気がすむまで、岩谷麻優と並んだ、対等の立場になれた、超えたと思えるまでやる。岩谷麻優に勝つことだけが、超えるということではないでしょう」

STARSへの帰還を拒否したキッドを抱きしめる岩谷

　まず、キッドは岩谷が持っているハイスピード王座の防衛記録を塗り替えるという。

「8回挑戦して4年かけてやっと取れたベルトなので、岩谷麻優の最多防衛記録9回を超えることは、私に与えられた使命。誰でもいいわけじゃない。一つ一つの防衛戦を大事にしていきたい。

　ハイスピードの固定観念、『小さくて速い』にとらわれなくていい。渡辺桃は今までのハイスピードのような選手じゃないと思う人がいるかもしれないけれど、私とやったら嫌でもハイスピードの試合になるから。

　欲を言えば葉月もそう。なんだこいつと思う部分もありますよ。あんな引退の仕方して。過去に挑戦して負けている復讐をしたい。無理やりにでも巻き込むから。巻き込みたいなぁ……」

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