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《ドラフト4球団競合・西武1位》西日本工業大・隅田知一郎、3人のプロ野球スカウトが語った「ウチに入れば、左投手でトップクラス」
text by
安倍昌彦Masahiko Abe
photograph bySankei Shimbun
posted2021/10/11 18:55
4球団競合の末、西武が交渉権を獲得した西日本工業大・隅田知一郎投手(177cm76kg・左投左打・波佐見高)
スカウトがスカウトに取材
その1カ月前、高校野球・九州大会が行われていた大分・別大興産スタジアム。
明日の九州大会の試合と、60キロほど離れた中津市の球場で行われる西日本工業大のリーグ戦。どうしたら、うまいこと両方とも見られるか……スカウトたちが、目の前の試合そっちのけで論じ合っていた。
そして、翌日。中津での隅田のピッチングを見てから、大分に移動してきたスカウトたちに、「大分番」のスカウトたちが取材すること、取材すること……。
それほどの怪腕なんだな、と。そういうシーンに立ち会うだけでも、選手の実力が垣間見える。
「今年は、もう春からプロを意識して投げてましたから、全日本の上武大の試合は、自分にとって最大の“就活”。ブライト君には僕のいちばん自信あるクロスファイアーで勝負。ほかのバッターには、新兵器のツーシームやチェンジアップで打ち取る。それがテーマでした」
その3球のクロスファイアー。確か2球目のきびしいコースを、レフトポールの左にでかいファウルを打たれている。
「そうなんです。打たれたことのないコースだったんで、いやー、さすが上武の4番だなぁと。その打球を見て、キャッチャーが変化球のサイン出してきたんですよ。でも自分、ここはもう決めたことですから……首振って、3つ目のクロスファイアー持っていったら、それがボール1つ中に入ってしまって」
失投を、ブライト健太が見逃さなかった。全身をしならせるようなスイングから、バットヘッドがパーン!と跳ね返ったからたまらない。ライナー性の打球が、次の瞬間、左中間スタンド中段に突き刺さっていた。
「いえ、ぜんぜん後悔してません。あそこで、変化球使っていれば、ホームランにはならなかったかもしれないけど、自分のピッチングスタイルはそういうんじゃないんで。次の打席は、同じクロスファイアーで打ち取って、ブライト君ぐらいの強打者にも、きびしくいけば通用するのがわかったし。本当の意味のコントロールはまだまだだっていうこともわかった。最初で負けましたけど、自分としては、それ以上の収穫だったと思ってます」
「12球団どこでも、喜んでお世話になります」
中肉中背、パッと見、大人しそうにも見えるが、いやいや、どうして、隠し持っている「牙」は相当に鋭い。