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佐藤寿人が“減俸提示”で考えた自分の仕事「フォワード=ストライカー、じゃない」《今、最も気になる選手は?》
text by
金子達仁Tatsuhito Kaneko
photograph byKiichi Matsumoto
posted2021/10/11 11:03
キャリアの中で挫折の1つだと語ったのは2011年シーズン。自らが求められる仕事を整理できたことで、そこから再びゴールを量産する日々が始まった
とりたてて高い技術があったわけではない。圧倒的な高さや、爆発的な速さやバネがあったわけでもない。それでもJリーグで通算220点をあげることができたという自負が、「だからストライカーは育てられる」と佐藤に言わせる。
だが、本当にそうなのだろうか、と訝しく思うストライカーの卵がいるかもしれない。まだ無名の、ゴールを量産したことのないストライカー候補生にとって、佐藤寿人の抜け出しの巧みさは、ボレーを合わせる感覚は、そして何よりゴールキーパーの裏をつく感覚は、天からのギフトとしか思えないかもしれない。
ストライカーに必要なのは天賦の才能──そんな考えから依然として抜け出せない人もいるかもしれない。
パソコン画面に映し出されたデータ
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2021年の佐藤寿人は、下は小学生から上はJリーグまで、ストライカー不足、決定力不足に悩むチームに足を運んでは、アドバイスを送っている。現役時代、ヒュンメルの特注スパイクを相棒にしていた男は、いま、パソコンを片手に全国を飛び回る。
「中学時代、パソコン部だったのがめちゃくちゃ役に立ってます。選手にアドバイスするにしても、映像とデータを添えて伝えると説得力がありますから」
ちょっと見てみますか、と言って開いてくれたパソコンの画面を覗かせてもらうと、そこには世界中のストライカーたちのゴールパターンとゴールを決めた位置などがキチンとデータ化されていた。
「クリロナってドリブルが上手いってイメージ、あるじゃないですか。でもこうやってデータをとってみると、彼のゴールのほとんどはダイレクトか2タッチで、ほとんどのシュートはペナルティエリアの中から打たれてることがわかります。というか、彼に限らず、世界中のどんなストライカーであっても、得点の9割以上はボックス内から決めてるんですよね」
逆に、意外なほど少なかったのは3タッチ以上を経ての、つまりドリブル突破によるゴールだった。佐藤のデータや考えに則れば、なぜ東京オリンピックでの日本代表が勝ち進むに連れて得点から遠ざかったのか、という理由も見えてくる。
グループリーグを突破してからの日本は、明らかに久保と堂安のボールタッチ数が増えていた──。