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《追悼》10万人の地鳴りのような合いの手…作曲家・すぎやまこういちが遺した傑作『GIファンファーレ』日本ダービー秘話
text by
梅津有希子Yukiko Umetsu
photograph by陸上自衛隊中央音楽隊提供
posted2021/10/10 06:01
わずか20秒の演奏で熱気は最高潮に
「絶対に失敗出来ない」トランペットの緊張と重圧
樋口隊長は、元奏者として最初に音を吹き出すトランペットのプレッシャーをこう解説する。
「出だしの音からパーンと吹かなければいけない大変な緊張感。生演奏でやり直しがきかないので、絶対に失敗出来ないプレッシャーは相当なものです」
中央音楽隊に来て約3年になる、トランペット奏者の長谷川賢二氏はこう話す。
「初めてメンバーに選ばれた時は、光栄な一方で、とにかく出だしの音を外さないようとても緊張したことを思い出します」
長谷川氏の隣で、'92年入隊のベテランホルン奏者・丹羽潤一氏が「30年近く吹いているので、特に緊張はしない」というと、「お前が吹くのは出だしのトランペットの後の『チャチャチャチャン』だから、そりゃ緊張しないよな!(笑)」と、すかさず樋口隊長からツッコミが入る。チームワークのいい、なごやかな職場だなと感じた。
新型コロナウイルス感染拡大防止のため、無観客での開催となった今年の日本ダービー。中央音楽隊によるファンファーレの生演奏も残念ながら中止が決定し、当日はCD音源をかけて対応するという。またあの大観衆の前で、日本屈指のハーモニーが聴ける日が来ることを願うばかりだ。