濃度・オブ・ザ・リングBACK NUMBER
「ガチで生きる」那須川天心、キック残り3試合でも“別れの感慨なし”の理由とは? 9.23RISEは“因縁の相手”で「(KOは)めちゃめちゃ意識」
text by
橋本宗洋Norihiro Hashimoto
photograph byNorihiro Hashimoto
posted2021/09/21 17:03
9月23日のRISEで対戦する那須川天心(左)と鈴木真彦。因縁の対決の行方は……
公式戦全勝。誰が向かってきても返り討ちにしてきた。次から次に現れる“最強の挑戦者”を倒し「キック界の次世代の芽を自分が摘んでしまってるんじゃないか」と思う時もあったという。1年後にはボクシングの世界にいる。そういう状況でなお「基本を確認」し「丁寧に」闘おうというのだから感服するしかない。
もちろん、ボクシングの世界に行くことを見据えてはいる。先を見ているから、誰が相手でもモチベーションが下がることはないそうだ。といって、最後の最後まで“キックボクサー・那須川天心”を究めようという姿勢も失っていないのである。
「基礎中の基礎をずっとやってきました。突き詰めれば突き詰めるほどシンプルになってますね。個々の試合じゃなく“もっと上に行ったら通用しない”という感覚でやってます」
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以前インタビューした際に聞いたのだが、那須川は普段の練習と試合に向けた“追い込み”練習の強度の差が小さいそうだ。試合が決まっていてもそうでなくても、練習に取り組む姿勢は変わらない。格闘技が好きで、強くなりたくて、それが仕事だから。昨年春からの“ステイホーム”期、ジムでの練習がままならない中でも「問題ない」と言っていた。それならそれで工夫すればいいだけで、考えればやることはいくらでもあるというのだ。
「ガチで生きるしかない。」
キックボクシングのカウントダウンが始まることも、ことさらには意識しない。
「あと3試合しかないのかと思ったこともありますけど、流れが速いですから。蹴りが使えなくなるとか、そういう感覚はぶっちゃけないですね。いつ死んでもいいという気持ちで生きてるし、これでキックは終わりですと言われたら“そうですか”と言えます」
今回の試合、勝負を分けるのは「格闘技への思い」だと那須川。
「僕は職業が格闘家。格闘技を愛してやってますから。その部分では誰にも負けない」
今大会、ABEMA中継のキャッチコピーにも那須川の言葉が使われている。
〈ガチで生きるしかない。〉
毎日をガチで生きる。それは「同じ日を繰り返さない」という意味でもあるという。誰が相手でもナメてかかることはない。ボクサーになるのだからと今取り組んでいるキックボクシングをおろそかにはしない。もちろん試合があってもなくても「ガチ」なのは変わらない。
日々をガチで生きて、おそらく2021年9月23日の那須川天心はキャリア最強だ。鈴木が勝つにはリング上で6年分の「ガチ」を見せるしかない。那須川は対戦相手にも、もしかしたら見る者にも「お前はガチで生きているのか?」と問いかける。だから、彼の試合を見ると背筋が伸びる。
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