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「トミヤスはユーべが獲るはずだった」から2年で“30億円DF”に… 冨安健洋が育ったイタリア流守備の極意《鬼の闘将も惜しむ》 

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弓削高志

弓削高志Takashi Yuge

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posted2021/09/17 11:03

「トミヤスはユーべが獲るはずだった」から2年で“30億円DF”に… 冨安健洋が育ったイタリア流守備の極意《鬼の闘将も惜しむ》<Number Web> photograph by Getty Images

セリエAで力を蓄えた冨安健洋。守備の国での2年間があったからこそ、アーセナルへとステップアップできた

 14-0で日本代表が大勝した3月のW杯予選モンゴル戦直後に故障すると「大量得点で勝てるような試合に(俺の)冨安を使うな」と代表での起用法に物申したこともあった。

 1年目の右SB起用はもちろんテクニカルな見地に立ったものだが、守備の責任度合いが格段に増すCBへの起用を2年目まで待ったのは、大事な才能をきちんと育て上げよう、というミハイロビッチの親心に他ならないだろう。

もう1年「セリエAでのCB冨安」が見たかったワケ

 できることなら、もう1年、セリエAでのCB冨安を見たかった。守備の国におけるDFの評価軸は、チェントラーレ(CB)の対人守備に大きな比重を置くからだ。

 もちろんサイドを往復する持久力やクロスの技術、高さやラインコントロールの正確さといったDFとしての各スキルがそれぞれ重要なことには変わりない。

 だが、トップクラスのDFとして評価されるのは、やはり“ウノ・コントロ・ウノ(1対1)”や“ア・ウオモ(マンツーマン)”に強いストッパーだ。冨安獲得を狙っていたトッテナムが、同い年ながら昨季のセリエA最優秀DFクリスティアン・ロメロに総額5500万ユーロ(約71億円)を積んでアタランタから買い取ったのはその一例だといえる。

 今夏、EUROを制したイタリア代表では、ユベントスのDFジョルジョ・キエッリーニとDFレオナルド・ボヌッチのいぶし銀2人が“欧州の壁”となった。彼ら2人と「BBCトリオ」の名で長くプレーし、19年限りで引退した名DFアンドレア・バルザーリは、イングランドとのEURO2020決勝戦を前に、イタリア流対人守備術のイロハを説いている。

イタリア流DFの極意と、カンナバーロvsマラドーナ秘話

 曰く、局面の流れを読む。ボールと相手の間に体を入れたら漏らさない。試合開始と同時にフィジカルコンタクトがどこまで許されるか、レフェリーの笛の基準を察知する。フィールドプレーヤーの背骨として、ここぞというときには対戦相手が萎縮するほどの大声で味方に檄を飛ばす。

 何を今さら、な定石かもしれない。だが、この極意を愚直に継承してきたからこそ、イタリアは優れた名DFたちを輩出してきたのだ。

 バルザーリの教えに、達人ファビオ・カンナバーロの逸話もつけ加えたい。

【次ページ】 ボールを奪われたマラドーナは怒るどころか……

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