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「本当しんどかったですもん、練習(笑)」ボクシング入江聖奈が明かした競技引退宣言の本音…中学時代にお母さんからもらった手紙とは?
text by
田中大貴Daiki Tanaka
photograph byKiichi Matsumoto
posted2021/09/16 11:02
女子ボクシング界に初めて金メダルをもたらした入江聖奈(日体大3年)。押し出すことを意識して磨いた左ジャブをカメラに向けて披露した
――故郷・鳥取に帰った時は、ご両親からどんな言葉をかけられましたか?
お母さんはすごくあっさりしていましたね。「すごいね」ぐらいしか言ってくれなくて、もうちょっとあるでしょ!と思ったんですけど(笑)。あ、でも、(鳥取に帰ってからは)ほぼ毎日ごちそうでした。お父さんは金メダルをパシャパシャ撮って、インスタグラムに上げていました(笑)。これまでも釣った魚と一緒に私の賞状とかを上げたりしてくれていて。だから釣ったイカと一緒にいます、私の金メダル(笑)。
――お父さん、面白いですね(笑)。入江選手にとってご両親はどういう存在でしょうか?
基本的には自分のやりたいことを、自由にやらせてくれた両親だと思います。滅多に怒られないんです。小学生の時も寝落ちするまでゲームしていたこともありましたし……(笑)。
でも、自分がジムのスタッフさんのことを「おばさん」と呼んだ時と、ムカついたのでドアをバーンと閉めた時はめちゃくちゃ怒られた記憶があります。人を傷つける言葉とか行動にはお父さんもお母さんも敏感だったなという気がします。ボクシング面でも何も言わずに見守ってくれていましたが、自分に負けるようなことは許さないというか。
――何か印象的な言葉などはありますか?
言葉というか、お母さんからの手紙ですかね。「ちょっと努力が足りないんじゃない?」とか。
――手紙?
そうです。たぶん中学生ぐらい、反抗期だったころ。ボクシングのことじゃないんですけど、ちょっと勉強をサボり気味だった時期があって、「まとまった時間がないから勉強する気にならない」と言ったことがありました。そしたらお母さんからの手紙に「ローマは一日にして成らず」という言葉があって、時間を見つけてちょっとずつやったら?みたいな感じで書いてありました。
今考えると、まとまった時間がないとしないというのは、やらない人の言い訳ですよね。もうボクシングを始めていたので、勉強もちゃんと頑張らないといけないんだなと思ったことは覚えています。
――今も手紙のやりとりはあるんですか?
今はもうないですよ。当時は反抗期だったので何を言っても聞かない面倒くさい子だったので(笑)、喧嘩した後とかにもよく手紙をもらっていました。「昨日はごめんね。お母さんも言い過ぎたよ」とか。口で言うより何倍も時間がかかることですし、改めて考えたら手紙を書くってそんな簡単にやれることじゃないですよね。だから自分の中にしっかり、すっと入ってきたんだと思います。
――では、金メダルの思いは手紙に?
いや、今はちょっと照れくさいですねえ(笑)。でも、ほんとにのびのびと過ごさせてもらったことは本当に感謝しています。だから、あまりグチグチ言わなくてもいいんだろうなと思います、教育は……わかんないですけど(笑)。