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“美しい柔道家”は3カ国語堪能、名門ハーバード大卒スプリンター、数学者が金メダリスト… 世界は文武両道のスケールもデカい
posted2021/08/09 06:00
text by
茂野聡士Satoshi Shigeno
photograph by
Getty Images(L,R)/Takuya Matsunaga,JMPA
なんだかんだ言って盛り上がった東京五輪が閉幕した。
日本選手団が五輪で最多となるメダル数を記録、あのメダリストの知られざるイイ話を数多く目にしてきた。その中で5日の男子20km競歩では、京大卒の山西利和が銅メダルを獲得した。
すでに2019年の世界選手権でも優勝経験があるなど一流のアスリートなわけだが、五輪メダリストという究極の文武両道という新たなパターンでの驚きをもたらしてくれた。
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でも山西だけでなく……今回、日本勢の対戦相手や普段はあまり見ない競技の中継を見ていて「へえ、世界でも学問と競技を両立しているアスリートって多いんだな」と気づかされることが多かった気がする。
せっかくだし、彼らや彼女たちのバックボーンを知ることができないか……と思っていたところ、五輪の公式サイトが各選手のプロフィールをしっかり作っていたのである。
国籍や性別、生年月日や出身地だけでなく、その競技を始めた理由やトレーニング時間などなど、かなり充実している。開幕前は「IOCめ……」と外野の立場でモヤモヤしていたが、競技を見ながら同サイトで気になった選手名を検索していくと意外と楽しかった。せっかくなので記憶に残しておこう――ということで、知力と体力の両方を磨いた素晴らしい選手たちを何人か紹介していこう。
数学と山岳レースを愛した金メダリスト
(1)アナ・キーゼンホファー/自転車ロードレース
ここ近年、オリンピックもネット配信されるようになった。ただしテレビ中継は日本の強い競技中心になるため、自転車ロードレースを目にした人はさほど多くなかったかもしれない。それでもキーゼンホファーは7月25日の女子ロードレースで、137kmもの長距離の中で残り40kmから独走し、3時間52分45秒で金メダルを獲得。素晴らしい走りぶりだった。
その逃げ切りは計算通り……そう、彼女は数学者なのである。五輪サイトにはこんな感じで触れられている。
「イギリスのケンブリッジ大学で数学の修士号、カタルーニャ工科大学で応用数学の博士号を取得。そしてスイス工科大で数学の研究員として働いている」