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《男子ゴルフ》松山英樹、“特別な場所”でメダル届かず「ゴルフはメジャーが4つあって、恵まれているのかな」
text by
舩越園子Sonoko Funakoshi
photograph byShizuka Minami
posted2021/08/02 06:00
銅メダルを懸けた7名によるプレーオフで敗れた松山英樹。体調が万全ではない中で、最後まで戦い抜いた
その様子は3日目にも見て取れた。仕切り直しこそ無くなったものの、手を離したり、不安げに打球を見守ったり、ボールの落下地点を見て安堵したりの表情や仕草は、依然として彼が苦しいゴルフをしていることを示していた。
「感覚がひどすぎて、呆れて笑ってます」
それほど苦しみながらも、生み出された数々のバーディーと好スコアは、彼の気力が導き出した奇跡としか思えなかった。
2日目は7バーディー、ノーボギー。3日目は5バーディー、1ボギー。単独首位に立ったシャウフェレと1打差で、ともに最終日最終組を回ることは、コロナ陽性となって自主隔離中だったときには「まったく信じられなかった」。
猛暑の下で、すでに開幕前5日間の猛練習と3日間の本戦を経た松山の体力気力は限界に近い。何もかもが苦しい背水の陣で彼が挑む最終日。
「明日1日だけでも、もってくれたら……」
そんな松山の祈りを、私も唱えながら、彼のティオフを見守った。
17番、メダルは「ほぼないと思った」
1番の第1打を左ラフに入れながらも、しっかりパーを拾って発進した松山は、落ち着いているかに見えた。
2番からはフェアウエイを捉え始め、ティショットの安定性は格段に増していた。しかし、バーディーチャンスをなかなかモノにできず、一方で2連続バーディーで発進したシャウフェレは5番でもバーディー獲得。2人の差は2打、3打、4打と広がっていき、松山が左の深いラフにつかまってボギーを喫した8番で、シャウフェレとの差はついに5打まで広がった。
いつしか松山は同組のポール・ケーシーにも追い抜かれ、スコアを伸ばしてきた他選手たちも加わって優勝争いは大混戦へ。松山のメダル獲得には徐々に暗雲が立ち込めた。
だが、松山はそれでも諦めず、9番、11番、12 番でバーディーを奪い返した。しかし、その矢先に13番でボギー。14番で再度バーディーを奪い返し、シャウフェレと1打差まで迫ったが、15番は痛恨の3パットでボギー。
スコアを伸ばしては落としてしまう展開からは、松山が持てる力を必死に振り絞っていることがひしひしと伝わってきた。だが、彼の歯車はどこか1つ狂っているようで、必死の奮闘がなかなか報われない展開でもあった。
「14番でリーダーボードを見て、17アンダー以上いかないと、金はないと思った」
しかし、通算15アンダーで迎えた16番で2メートル半のバーディーパットを外した時点で、金メダルの可能性は大きく遠のき、17番で1メートル半を外した時点で銀メダルも「ほぼないと思った」。
天を仰ぎ、「あー」と溜め息をついた松山は、18番でもピン3メートルに付けながら単独3位になるチャンスも逃し、7人のプレーオフへ突入。フェアウエイからの第2打はグリーン際のバンカーの淵に止まり、ボギーを喫して1ホール目で脱落。
すぐそばまで近づいたはずのメダルは、金銀銅すべてを逃がし、4位タイに甘んじた。