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「私が対応できたことでどんどん流れが…」水谷隼の長年の“使命”「打倒中国」を呼び寄せた、伊藤美誠の“恐れを知らない強心臓”とは 

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高樹ミナ

高樹ミナMina Takagi

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photograph byTakuya Matsunaga/JMPA

posted2021/07/28 20:01

「私が対応できたことでどんどん流れが…」水谷隼の長年の“使命”「打倒中国」を呼び寄せた、伊藤美誠の“恐れを知らない強心臓”とは<Number Web> photograph by Takuya Matsunaga/JMPA

決勝の終盤は中国ペアを圧倒した水谷と伊藤。最強ペアを破り、日本卓球史上初の金メダルを獲得した

「打倒中国」を目指す水谷が出会った“最高のパートナー”

 中国は五輪で計28個の金メダルを獲得し、2008年北京、2012年ロンドン、2016年リオでは金メダルを総なめにしている。いわば世界最強軍団だ。

 水谷は言う。

「昔も今も中国の壁は多分、皆さんが思っているよりも高い。今まで越えることができなかったし、(勝って金メダルを取った)これから先もずっとずっと、ものすごく高いと思っている」

 水谷が初めて五輪代表に選ばれたのは2008年北京大会、19歳のときだった。以降は2012年ロンドン、2016年リオ、そして今回の東京と4大会連続で五輪に出場。リオでは男子団体銀メダル、そしてシングルスでは日本の男女を通じて初となるメダル(銅)を獲得した。

 今年6月に32歳になった水谷は、常に日本卓球界の将来を託される存在だった。

 当然そこには「打倒中国」の使命も含まれる。だが中国はあまりにも強く、課されたミッションはとてつもなく重かった。

 そんな水谷に、伊藤という現在女子世界ランキング2位の一流のパートナーが現れた。同じ静岡県磐田市出身の伊藤とは子どもの時分から旧知の仲だが、五輪で混合ダブルスが初採用された東京大会を控えたタイミングでペアを組めたのは幸運としか言いようがない。

対戦相手も伊藤を絶賛「世界一流」

 水谷が長年背負ってきたミッションは、伊藤とともに臨んだ東京五輪混合ダブルス決勝の第7ゲームに集約された。水谷の両ハンドと伊藤のブロックやスマッシュが炸裂し、怒とうの8連続ポイント。8ポイント目の伊藤のスマッシュは打球点が早すぎて、世界一のフットワークを持つ許昕の準備がまったく間に合わなかったくらいだ。

 水谷のYGサーブも劉詩雯によく利いて、あの世界最強の中国がどんどん追い詰められていった。

 先にマッチポイントを握ったのは、日本だった。伊藤が渾身の逆チキータレシーブを繰り出すと、最後も伊藤の思い切ったロングサーブで許昕を討ち取り決着。ついに中国を破り五輪の金メダルを手にした水谷は伊藤に歩み寄り、最高のパートナーを抱きしめた。

「茫然自失という言葉が似合うかもしれない。中国を越えたのが初めてだったので、本当に信じられないという気持ちの方が大きかった。今回は少し活路を見出せて、やはりオリンピックという特別な舞台では中国選手も同じ人間だというのを感じた」

【次ページ】 「明日起きたときに、まだそばに金メダルがあれば嬉しいです」

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