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“J3が主戦場、五輪代表も控えGK続き”だった谷晃生が正守護神になるまで 川口能活コーチも認める「強み」でメキシコを止めるか 

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飯尾篤史

飯尾篤史Atsushi Iio

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photograph byKaoru Watanabe/JMPA

posted2021/07/24 17:03

“J3が主戦場、五輪代表も控えGK続き”だった谷晃生が正守護神になるまで 川口能活コーチも認める「強み」でメキシコを止めるか<Number Web> photograph by Kaoru Watanabe/JMPA

南アフリカ戦でゴールマウスを守った谷晃生。メキシコ相手にも無失点なるか

待ちに待ったJ1デビュー戦で最高の「1-0」

 20年シーズンの開幕からしばらくベンチを温めた谷にチャンスが訪れたのは、コロナ禍による中断期間を経て7月22日に行われた6節の鹿島アントラーズ戦である。待ちに待ったJ1デビュー戦で、谷は1-0というGKにとって最高の結果を掴む。

「ようやくチャンスが来たなって。緊張感もありましたけど、ワクワクする気持ち、やってやろうっていう気持ち、いろんな感情がありました。意外と落ち着いてやれたというか。とりあえず、声が嗄れるまでコーチングしてやろうって。自分に言い聞かせるようにコーチングしていました」

 この勝利によって新天地で定位置を掴んだ谷は、これまでに味わったことのない経験を積んでいく。

 6連敗にもがき苦しみ、日々の練習ではポジションを奪い返されかねない危機感を覚え、痺れるような雰囲気に身を置く充実感を味わった。

「シュートストップやハイボール、クロスボールの対応、ポジショニングや予測といった自分の武器がJ1でも通用すると分かったのは大きかったですね。それに感情の起伏を少なくすることも覚えました。中2日、中3日で次々と試合がやってくる中で、落ち込んでいる暇はないですから。結果が出なくても自分の中で整理して、噛み砕いていくことができるようになった。それは成長した部分だと思います」

G大阪U-23の森下監督に指摘された課題

 こうした感情のコントロールこそ、G大阪U-23時代から森下仁志監督に指摘されてきた課題だった。

「自分のプレーに納得がいかないと苛立ったりしていて、仁志さんにはずっと指摘されていました。『お前はいいプレーができるんだから』と自信も与えてもらって。2年前なんか、半分以上がユースの選手という環境で練習をしていた。そこで不貞腐れていたら今の自分はない。あのとき支えてくれた仁志さんやU-23のスタッフには本当に感謝しています」

 J1での戦いのなかで見違えるほどの成長を遂げた谷を、代表スタッフが見逃すわけはなかった。

 コロナ禍で約1年2カ月ぶりの試合となった21年3月のアルゼンチン戦に招集された谷は、29日に行われた第2戦でスタメンに指名される。

 17年12月のタイ遠征から6度の活動に呼ばれながら、18年11月のUAE遠征のクウェート戦の後半45分しか出番のなかった谷にとって、これが2度目の出場であり、初スタメンだった。

 このチャンスを、谷はしっかりと掴んだ。

【次ページ】 アトランタ五輪のヒーロー、川口コーチの評価は

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